相殺には担保的機能があるらしい。でも担保的機能って何なのでしょう。相殺についての定めは、民法399条~724条「第三編 債権編」の中の、399条~520条「第一章 総則」の中の、474条~520条「第五節 債権の消滅」にあります(505条~512条。「第二款 相殺」のところ)。規定の位置からは、債権の消滅原因の一つであるにすぎないように思えます。債権の一消滅原因にすぎないものに、何で担保的機能があるのでしょうか。
2015年12月18日
2015年6月17日
「第三者」と「第三債務者」と「第三取得者」
「第三者」
当事者以外の人です。
売買契約では、売主と買主が当事者です。売主と買主以外の人は、この売買契約の第三者です。民法94条の「第三者」とか、民法177条の「第三者」とか、さまざまな法律が規定するそれぞれの第三者がいます。大抵は、ある法律関係に対して法律上の利益を有する人とか、正当な利益を有する人が「第三者」になります。
「第三債務者」
債務者の債務者です。
金融機関が融資する場面で考えます。金融機関Aが個人商店を営むBさんに100万円貸しました。が、Bさんの経営は苦しくなってきており、返済が滞っています。Aは何とか貸金債権を回収したい。Bさんは取引先C社に商品を売っているので、C社に対して売掛債権を持っています。Aとしては、C社がBさんに対して支払う買掛金を、Bさんにではなく自分に払ってもらえれば、貸金債権を回収できます。これを実現するのが民事執行法に基づく債権執行です。
ここでのC社が、第三債務者です。C社は、債権者Aの債務者Bの債務者なので、Aにとって第三債務者と表現されます。民事執行法145条など参照。
「第三取得者」
担保物権が設定された後に、担保の目的となった物を取得した人です。
金融機関Aが個人商店主Bさんに100万円貸した上の例で、Aの100万円の債権を担保するために、B所有の不動産甲(空き地)に抵当権を設定し登記を経たという場面で考えます。甲には抵当権が設定されていますが、抵当権者は甲の金銭的価値(換価権)を把握しているにすぎません(非占有)。甲の所有者であるBさんは甲を自由に使えますし、誰かに使わせる、売るといったことも自由です。Bさんは経営がピンチなので、甲を売って資金を作りたいと考えました。そんなBさんの前に、どこかの空き地に丸太を保管しておきたいDさんが現れました。DさんはBさんから甲を買って、甲に丸太を保管しはじめました。
このDさんが甲の第三取得者です。Bさんの返済が滞れば、Aは抵当権を実行して甲を換価し、売却代金から貸金債権を回収します。抵当権をはじめとした担保物権には追及力があるので、Aの抵当権に後れるDの所有権は、抵当権実行により消滅してしまいます(民事執行法59条)。抵当権の実行によってDさん以外の人が甲を買って売却代金を納付すれば、以降はその人が甲の所有者です(民事執行法79条)。第三取得者は債務を負っているわけではありませんが、責任を負担しているのです。
以上、簡単に。
2014年2月23日
【破産・民事再生】手続開始前の中止命令をめぐる攻防
手続開始申立てから手続開始決定までの話。
手続開始決定があった後は、債権者の自由な個別的権利行使は認められないので(破100条1項・民再85条1項)、新たに強制執行等をすることはできないし、すでにされている強制執行はその効力を失います(破42条1項・2項・民再39条1項)。
このような効果は手続開始決定(破30条・民再33条)によって生じるので、手続開始決定前の強制執行は原則として許されます。ですが、倒産手続開始の申立ては実質的には財産状態が悪化し整理が必要な状況でなされるので、債権者間の平等を図るため、手続の実効性を担保するための措置が必要です。このような配慮から、手続開始前の中止命令の制度が設けられました(破24条~27条・民再26条~29条)。
手続開始前の中止命令が出てくる場面を、攻防手段という側面からみます。中止命令の対象には強制執行以外にも様々なものがありますが(破24条1項各号、民再26条1項各号)、以下では強制執行を念頭に検討します。
手続開始決定があった後は、債権者の自由な個別的権利行使は認められないので(破100条1項・民再85条1項)、新たに強制執行等をすることはできないし、すでにされている強制執行はその効力を失います(破42条1項・2項・民再39条1項)。
このような効果は手続開始決定(破30条・民再33条)によって生じるので、手続開始決定前の強制執行は原則として許されます。ですが、倒産手続開始の申立ては実質的には財産状態が悪化し整理が必要な状況でなされるので、債権者間の平等を図るため、手続の実効性を担保するための措置が必要です。このような配慮から、手続開始前の中止命令の制度が設けられました(破24条~27条・民再26条~29条)。
手続開始前の中止命令が出てくる場面を、攻防手段という側面からみます。中止命令の対象には強制執行以外にも様々なものがありますが(破24条1項各号、民再26条1項各号)、以下では強制執行を念頭に検討します。
2014年2月21日
【差押えと登記】差押債権者は民法177条の「第三者」か
無権利の法理、登記制度の理想という点を考慮して考えてみます。
「XはAから不動産甲を購入したが、登記は経由していない。他方、YはAに対して500万円を貸し付けたが、Aが弁済期を経過しても弁済しないのでAの不動産甲を競売して満足を得ようと考え、差押えをした」というケースを考えます。
2013年8月7日
物上代位③ 「民法304条1項ただし書の差押えの趣旨」と「『民法372条が準用する』304条1項ただし書の差押えの趣旨」
物上代位の勉強は、先取特権の最判昭和60年7月19日民集39巻5号1326頁=S60判決(&最判平成17年2月22日民集59巻2号314頁=H17判決)と、抵当権の最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁=H10判決を比較することが大事です。
先取特権の物上代位についての解説はこちら。
抵当権の物上代位についての解説はこちら。
先取特権の物上代位についての解説はこちら。
抵当権の物上代位についての解説はこちら。
物上代位② 抵当権に基づく物上代位(『民法372条が準用する』304条1項ただし書の差押えの趣旨)
物上代位の勉強は、先取特権の最判昭和60年7月19日民集39巻5号1326頁=S60判決(&最判平成17年2月22日民集59巻2号314頁=H17判決)と、抵当権の最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁=H10判決を比較することが大事です。
抵当権に基づく物上代位について考えます。
先取特権に基づく物上代位(民法304条1項ただし書の差押えの趣旨)はこちら。
Xは、Aに対して30億円の貸金債権を持っていた。Aは、4月2日、それを担保するためにA所有の甲不動産に抵当権を設定し、登記も経由した。
Aは、Yに対して甲を賃貸していた。
Aは、Bからも融資を受け、その担保として、5月2日、Yに対する将来の賃料債権を譲渡し、Yの確定日付ある承諾を得た。
AがXへの返済を履行しないため、Xは、6月2日、抵当権に基づく物上代位の行使として、AのYに対する賃料債権を差し押え、差押命令を得て、賃料債権の取り立てを請求した。
Xの請求は認められるか。Yの反論も考慮して考えよ。
抵当権に基づく物上代位について考えます。
先取特権に基づく物上代位(民法304条1項ただし書の差押えの趣旨)はこちら。
設問
Aは、Yに対して甲を賃貸していた。
Aは、Bからも融資を受け、その担保として、5月2日、Yに対する将来の賃料債権を譲渡し、Yの確定日付ある承諾を得た。
AがXへの返済を履行しないため、Xは、6月2日、抵当権に基づく物上代位の行使として、AのYに対する賃料債権を差し押え、差押命令を得て、賃料債権の取り立てを請求した。
Xの請求は認められるか。Yの反論も考慮して考えよ。
物上代位① 先取特権に基づく物上代位(民法304条1項ただし書の差押えの趣旨)
物上代位の勉強は、先取特権の最判昭和60年7月19日民集39巻5号1326頁=S60判決(&最判平成17年2月22日民集59巻2号314頁=H17判決)と、抵当権の最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁=H10判決を比較することが大事です。
設問で考えます。
設問で考えます。
Xは、Aに対して、乙動産を代金1000万円で売った。
Aは、Yに対して、乙動産を代金1200万円で転売し、引渡した。
Aは、Bから融資を受け、その担保として、5月2日、Yに対する乙の転売債権を譲渡し、Yの確定日付ある承諾を得た。
AがXへの売買代金を支払わないため、Xは、6月2日、先取特権に基づく物上代位の行使として、AのYに対する転売代金債権を差し押え、差押命令を得て、賃料債権の取り立てを請求した。
Xの請求は認められるか。Yの反論も考慮して考えよ。
Aは、Yに対して、乙動産を代金1200万円で転売し、引渡した。
Aは、Bから融資を受け、その担保として、5月2日、Yに対する乙の転売債権を譲渡し、Yの確定日付ある承諾を得た。
AがXへの売買代金を支払わないため、Xは、6月2日、先取特権に基づく物上代位の行使として、AのYに対する転売代金債権を差し押え、差押命令を得て、賃料債権の取り立てを請求した。
Xの請求は認められるか。Yの反論も考慮して考えよ。
2013年7月28日
【差押と相殺】 請求と反論、制限説のいいたいこと
制限説と無制限説の対立で有名です。S45年判例については次回。今回は何が問題となるのかというお話。
2 Yのなしうる反論を論じなさい。
3 Xの請求が認められるか、Yの反論に対するXの再反論を考慮しながら述べなさい(次回)。
事例
A会社は、500万円の国税を滞納しているが、Y会社に対して売掛金債権600万円を有している。
Y社は、Aに対して650万円の貸金債権を有している(Yが貸金債権を取得したのは、Xの差押え以前)。
AのYに対する売掛金債権の弁済期は同年6月10日であり、YのAに対する貸金債権の弁済期は同年12月10日である。
現在は、同年12月20日とする。
1 XのYに対する請求を立てなさい。Y社は、Aに対して650万円の貸金債権を有している(Yが貸金債権を取得したのは、Xの差押え以前)。
X(国)は、国税債権を回収するため、2013年5月7日に、AのYに対する売掛金債権を差し押さえた。
AのYに対する売掛金債権の弁済期は同年6月10日であり、YのAに対する貸金債権の弁済期は同年12月10日である。
現在は、同年12月20日とする。
2 Yのなしうる反論を論じなさい。
3 Xの請求が認められるか、Yの反論に対するXの再反論を考慮しながら述べなさい(次回)。
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