2015年6月17日

「第三者」と「第三債務者」と「第三取得者」

「第三者」


当事者以外の人です。

売買契約では、売主と買主が当事者です。売主と買主以外の人は、この売買契約の第三者です。民法94条の「第三者」とか、民法177条の「第三者」とか、さまざまな法律が規定するそれぞれの第三者がいます。大抵は、ある法律関係に対して法律上の利益を有する人とか、正当な利益を有する人が「第三者」になります。

「第三債務者」


債務者の債務者です。

金融機関が融資する場面で考えます。金融機関Aが個人商店を営むBさんに100万円貸しました。が、Bさんの経営は苦しくなってきており、返済が滞っています。Aは何とか貸金債権を回収したい。Bさんは取引先C社に商品を売っているので、C社に対して売掛債権を持っています。Aとしては、C社がBさんに対して支払う買掛金を、Bさんにではなく自分に払ってもらえれば、貸金債権を回収できます。これを実現するのが民事執行法に基づく債権執行です。

ここでのC社が、第三債務者です。C社は、債権者Aの債務者Bの債務者なので、Aにとって第三債務者と表現されます。民事執行法145条など参照。

「第三取得者」


担保物権が設定された後に、担保の目的となった物を取得した人です。

金融機関Aが個人商店主Bさんに100万円貸した上の例で、Aの100万円の債権を担保するために、B所有の不動産甲(空き地)に抵当権を設定し登記を経たという場面で考えます。甲には抵当権が設定されていますが、抵当権者は甲の金銭的価値(換価権)を把握しているにすぎません(非占有)。甲の所有者であるBさんは甲を自由に使えますし、誰かに使わせる、売るといったことも自由です。Bさんは経営がピンチなので、甲を売って資金を作りたいと考えました。そんなBさんの前に、どこかの空き地に丸太を保管しておきたいDさんが現れました。DさんはBさんから甲を買って、甲に丸太を保管しはじめました。

このDさんが甲の第三取得者です。Bさんの返済が滞れば、Aは抵当権を実行して甲を換価し、売却代金から貸金債権を回収します。抵当権をはじめとした担保物権には追及力があるので、Aの抵当権に後れるDの所有権は、抵当権実行により消滅してしまいます(民事執行法59条)。抵当権の実行によってDさん以外の人が甲を買って売却代金を納付すれば、以降はその人が甲の所有者です(民事執行法79条)。第三取得者は債務を負っているわけではありませんが、責任を負担しているのです。

以上、簡単に。