2014年12月9日

別除権協定について

根拠規定は民事再生法41条1項9号です(条解民事再生法[第3版]224頁)。
 

2014年12月5日

「民法110条の趣旨を類推適用して」について

最判昭和44年12月18日民集23巻12号2476頁です(家族法百選(第7版)8事件)。
 

2014年11月26日

「横領罪の構成要件は背任罪の構成要件に包含される」は本当か

「横領」の意義について領得行為説を、背任罪の本質について背信説を前提とした場合、横領罪の構成要件は背任罪の構成要件に包含されるといわれます。
本当かどうか、確かめます。
 

他人名義のクレジットカード不正使用について

詐欺罪の客観的構成要件は、①欺罔行為、②錯誤、③交付行為・処分行為、④騙取、⑤財産的損害、⑥因果関係(欺罔行為によって錯誤に陥り、錯誤に基づいて交付ないし処分したという関係にあること)です。
 
他人名義のクレジットカードを不正に使用した場合、何が詐欺罪の構成要件に該当するのか、何が問題なのかについて。

2014年11月18日

危険の現実化の「危険」について

刑法上の因果関係を判断する一方法です。最近割と人気。行為の危険が結果に現実化したと考えられる場合に、刑法上の因果関係を肯定する理論です。
この理論のいう「危険」とは何か。

2014年8月1日

民法859条の3について

民法859条の3は、「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」と定めます。

この規定が目的としているのは、成年被後見人の住まいマジ大事ということです。

「その居住の用に供する建物又はその敷地について」という文言からも明らかなとおり、被後見人所有の不動産に限られません。

というか、被後見人所有か否かはあまり重要視されていません。被後見人所有の不動産でも、居住用不動産でない場合もあるわけで。そのような場合には家庭裁判所の許可不要というわけです。

抵当権設定の場合を考えます。被後見人が住んでいる不動産が被後見人の所有に係る場合、当該不動産について抵当権を設定するには、家庭裁判所の許可が必要です。

しかし、被後見人所有の不動産であっても、居住している不動産ではない場合は、家庭裁判所の許可不要なわけです。

法律の文言にはそれなりの理由があるということで。

備忘録。

2014年7月24日

保証人が援用し得る消滅時効

保証債務が消滅すれば、保証人は弁済する義務を免れます。

消滅時効を援用すれば、保証債務は消滅します。

保証債務を消滅させるためのパターンとしては、次の3つかと思われ。

①保証債務について消滅時効を援用する


まあ、基本ですよね。

②主債務について、保証人の立場で消滅時効を援用する


保証人は、主債務の援用権者だと思われます。時効によって直接利益を受ける者でしょ?なので。

主債務が消滅すれば、附従性で保証債務も消滅しますし。

③主債務について、主債務者の時効援用権を代位して行使する


時効援用権は債権者代位の対象となった気がする。


こんな感じですかね?

2014年7月15日

構成要件的故意と責任故意

「何やったかわかってんのか!?」
と問われるのが構成要件的故意。認識認容があるかないかのアレ。「構成要件要素を認識してますか?」ってことだけ確認する。ルーチンな確認作業。構成要件の認識をひとつひとつ確認していけばよいから、マニュアル的作業。構成要件ごとにチェックシートを用意できるので。

「悪いと思っててやったのか!?」 
と問われるのが責任故意。違法性の意識の可能性があったのかなかったのかって奴。違法性の意識を欠いたことに相当の理由があったなら責任故意否定。 1人1人の内心にもぐって、具体的に探す。どうやって確認するかにマニュアルなし。「あんた、悪いと思っていたの?」を確認するには、チェックシートを用意できない。

以上です。

2014年6月19日

刑事訴訟法222条1項の読み方

「捜査機関による捜索・押収・検証に刑訴法222条1項で準用される刑訴法99条以下の各条文については、極めて重要であるにもかかわらず、理解を疎かにしている者もまま見受けられる。改めて、準用される各条文に関する理解の重要性を強調しておきたい」(角田雄彦 司法試験の問題と解説2013 296頁)。

2014年4月29日

「事業の執行について」の要件該当性

使用者責任(民法715条)の要件は、

  • 被用者に民法709条の不法行為責任が成立すること
  • 使用・被使用関係があること
  • 被用者の行為が使用者の「事業の執行について」行われたこと

の3点です(715条1項ただし書は消極的要件)。

「事業の執行について」の要件該当性についてメモ。

2014年4月25日

夫婦相互の日常家事代理権と表見代理(論じ方)

最判昭和44年12月18日民集23巻12号2476頁・家族百選8事件について。

事案は、旦那Aが経営するB商店が倒産してしまい、Y経営のC商会がB商店に対して有していた債権の回収にあてるため、Aが勝手に妻X所有の土地建物をYに売った(所有権移転登記済み)というもの。登場人物の表記は上記百選にならってます。

この事件を素材に、民法761条の日常家事代理権を基本代理権として、民法110条の表見代理が成立するかが問題となる場合の論じ方をメモしておきます。

2014年4月23日

弁済による代位と財団債権性・共益債権性の承継②

百選(5版)48事件に新しく収録された最判平成23年11月22日民集65巻8号3165頁(①事件)と、最判平成23年11月24日民集65巻8号3213頁(②事件)について。

問題点の所在を把握したり、百選の解説を理解するためにはもう少し補足説明が必要だと思うので、メモしておきます。主張反論形式で。

①事件についてはメモしたので、②事件について。

2014年4月22日

弁済による代位と財団債権性・共益債権性の承継①

百選(5版)48事件に新しく収録された最判平成23年11月22日民集65巻8号3165頁(①事件)と、最判平成23年11月24日民集65巻8号3213頁(②事件)について。

問題点の所在を把握したり、百選の解説を理解するためにはもう少し補足説明が必要だと思うので、メモしておきます。主張反論形式で。

まずは①事件から。

2014年4月19日

条例の法律適合性が問題になる場面‐徳島市公安条例事件

単なるメモ。

ここでの問題は、条例で制定できる事項は何かではなく、法律と条例の規制が競合するとき、それが許容されるか否かです(両者の違いについて、芦部(4版)353頁~、立憲主義と日本国憲法(2版)362頁~参照)。

事後強盗罪における暴行・脅迫が、窃盗の機会継続中になされたものでなければならない理由

事後強盗罪(刑法238条)の「暴行または脅迫」は、236条と同様、相手の反抗を抑圧するに足る程度のものが要求されます。そして、これは、窃盗の機会継続中に行われたものでなければなりません(最決平成14年2月14日刑集56巻2号86頁・百選Ⅱ(5版)38事件)。

その理由について。

2014年4月1日

【答案の書き方】公務員の表現の自由が問題となるとき(主張反論の一例)

公務員の表現の自由が問題となるときは、猿払事件上告審(最大判昭和49年11月6日刑集28巻9号393頁・百選Ⅰ13事件)や、猿払事件第1審(旭川地裁昭和43年3月25日下刑集10巻3号293頁・百選Ⅱ200事件)、そして、堀越事件(最判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁・百選Ⅰ14事件)を踏まえて論じることが大事です。

どう論じれば分かりやすくなるか、少し思いついたので、備忘としてメモ(ホントに単なる備忘です)。

2014年3月31日

境界損壊罪について

境界損壊罪が成立するには、境界を損壊するだけで足りるか、さらに認識が不能になるという結果の発生を要するかという問題があります。判例は、
「境界損壊罪が成立するためには、境界を認識することができなくなるという結果の発生することを要するのであって、境界標を損壊したが、未だ境界が不明にならない場合には、器物損壊罪が成立することは格別、境界損壊罪は成立しない」
としています(最判昭和43年6月28日刑集22巻6号569頁・百選Ⅱ80事件)。

このように判示された理由について簡単にメモ。

2014年3月29日

行政手続法の適用除外が規定されていることが、処分性を肯定する理由となるのはなぜか

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行訴法3条2項)とは、「公権力の主体たる国又は公共団体の行う行為のうちで、その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」といわれます(最判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁・百選Ⅱ156事件)。

この処分性を肯定する形式的理由として、個別法に行政手続法の適用除外の定めがあることが挙げられます。どうしてこれが処分性を肯定する理由となるのかよく分からなかったのですが、最近分かるようになったので、備忘としてメモしておくことにします。

2014年3月28日

行政文書の開示義務

原則として、行政文書の開示請求は認められます(行政機関の保有する情報の公開に関する法律〔情報公開法〕5条柱書)。行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければなりません。

例外的に、行政文書に不開示情報が記載されている場合にのみ、開示されないにすぎません。以下、不開示情報について。情報公開法5条を整理するための記事。

2014年3月27日

【憲法判例】「板まんだら」事件について簡単に

裁判所法3条の「法律上の争訟」の定義を示した最判昭和56年4月7日(民集35巻3号443頁・百選Ⅱ190事件)について。「法律上の争訟」の定義が書ければそれでイイ訳ではなくて、憲法ではどの条文の問題なのかを指摘することを忘れないように。

2014年3月26日

【答案の書き方】議員定数不均衡を争うときの基本

基本となるのは、最大判昭和51年4月14日(民集30巻3号223頁・百選Ⅱ153事件)です。以下、S51年判例と呼びます。山元一先生の百選解説、マジ分かりやすいのでオススメです。

ではさっそく。

2014年3月14日

規制目的二分論の目的

規制目的二分論とは、経済的自由権を規制する立法について、消極目的規制の法については、積極目的規制の法よりも合憲性審査を厳密にするべきという考え方です。ここでいう消極目的とは、国民の生命・健康に対する危険の防止を目的とすることをいい、積極目的とは、社会公共の便宜を促進し、社会的・経済的弱者の保護を目的とすることをいいます。

目的二分論の目的について混乱しがちなので、メモしておきます。

2014年3月13日

【憲法判例】北方ジャーナル事件についてメモ

最大判昭和61年6月11日(民集40巻4号872頁。百選Ⅰ72事件)です。北方ジャーナル事件を用いて、出版差し止めの仮処分が主張され、それに対する損害賠償請求の反論をし、問題点の所在を明確にしたうえで判旨につなげます。

この事件は民事保全法制定前のものですが、民事保全法に基づいて仮処分を申立てる場合を考えます。登場人物の表記は百選Ⅰ72事件に従います。

【憲法判例】よど号ハイジャック記事抹消事件についてメモ

最大判昭和58年6月22日(民集37巻5号793頁。百選Ⅰ16事件)について。旧監獄法時代の事件ですが、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律についても若干言及します。主張反論形式で記事にしますが、実際の攻防等は相違があります。正確なものは民集等を参照してください。

2014年3月12日

【憲法判例】泉佐野市民会館事件をメモ

最判平成7年3月7日(民集49巻3号687頁。百選Ⅰ86事件)について。主張反論形式で書きますが、実際の訴訟でなされた攻防とは相違があると思います。正確な情報が欲しい方は民集などを参照してください。

2014年3月11日

【憲法判例】京都府学連事件の主張反論

京都府学連事件(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁。百選Ⅰ18事件)の判決をより理解するため、判決に至るまでの議論を整理してみます。

2014年3月10日

手形法・小切手法の勉強について

司法試験的には、手形法・小切手法は民事系の短答式試験に2問ほど出題されるだけです。

2014年3月9日

【民事再生】再生債権が確定されるまでの流れ

民事再生手続は、再生債権の個別的権利行使を禁止し、再生債権者を「みんな、これしか払えないけどゴメンね」と平等に取扱い、それで我慢してもらうことで、債務者の再生を図ります。なので、対象になる再生債権(民再84条1項)を確定する必要があります。

再生債権が確定するまでの流れをメモ。

2014年3月7日

【民事再生】担保権消滅許可の手続

手続は、
  • ①再生債務者等による担保権消滅許可申立て
  • ②目的物の価額に異議のある担保権者による価額決定の請求
  • ③裁判所による価額の決定
  • ④価額に相当する金銭の納付
  • ⑤配当の実施
の順番で進みます。

別除権は再生手続によらないで行使できるので(民事再生法53条2項。以下、民事再生法の条文は法令名省略)、例えば、抵当権者は自由に抵当権を実行できます(民執法180条以下)。ですが、別除権行使が再生の妨げになることも事実です。これに対処するために、民事再生手続では、制度として担保権を消滅させることが可能になりました(148条以下)。

別除権行使をストップさせる方法には、他に別除権協定があります。別除権行使を思いとどまってもらう合意です。「分割で担保物件の評価額を払うから、担保を実行しないでね」という約束です。

以下、各手続について解説。

2014年3月6日

相殺の抗弁と重複起訴禁止原則についてメモ

民訴百選38①②事件(①最判平成3年12月17日民集45巻9号1435頁、②最判平成10年6月30日民集52巻4号1225頁)とA12事件(最判平成18年4月14日民集60巻4号1497頁)を読んでいて、ちょっと思うことがあったのでメモ。

2014年3月5日

一部請求と時効の中断

時効は、裁判上の請求によって中断します(民法147条1号・149条)。

「裁判上の請求」とは訴訟物のことを指すので、時効中断効は訴訟物の範囲に生じます。判決が既判力を有するのは「主文に包含するもの」の範囲に限られ(民訴法114条1項)、「主文に包含するもの」とは訴訟物のことだからです。

債権者代位と当事者適格、二重起訴についてメモ

債権者代位(民法423条)についてメモ。

2014年3月1日

商法526条2項について。商人間の売買において、目的物に瑕疵があったときには代金減額請求ができるのか?

できません。最判昭和29年1月22日民集8巻1号198頁(百選〔第3版〕54事件)が、
「商事売買の場合でも、売買の目的物の瑕疵又は数量の不足を理由として、契約を解除し、又は損害賠償若しくは代金の減額を請求するのは、民法の売買の規定に依拠すべきものである。しかして、民法の規定によれば、買主が売買の目的物に瑕疵あることを理由とするときは、契約を解除し、又は損害賠償の請求をすることはできるけれども、これを理由として代金の減額を請求することはできない。」
と判示しており、これが判例です。

以下、問題点の所在をメモ。

2014年2月28日

なぜ被疑者勾留の根拠条文は刑事訴訟法207条1項なのか

刑事訴訟法207条1項本文は、「前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する」と規定します(以下、刑事訴訟法の条文は法令名省略・条数のみ)。

なぜこれが被疑者勾留の根拠条文になるのか。刑事訴訟法には条文見出しがありませんが、有斐閣六法の編集委員が207条に付けた見出しは【被疑者の勾留】となっていますから、207条が被疑者勾留の根拠条文となるのは間違いないようです。しかし、207条1項の文言は「前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留することができる」という文言にはなっていません。

どうして「その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する」ことが被疑者勾留の根拠を示すのか。これについてメモ。

2014年2月23日

【破産・民事再生】手続開始前の中止命令をめぐる攻防

手続開始申立てから手続開始決定までの話。

手続開始決定があった後は、債権者の自由な個別的権利行使は認められないので(破100条1項・民再85条1項)、新たに強制執行等をすることはできないし、すでにされている強制執行はその効力を失います(破42条1項・2項・民再39条1項)。

このような効果は手続開始決定(破30条・民再33条)によって生じるので、手続開始決定前の強制執行は原則として許されます。ですが、倒産手続開始の申立ては実質的には財産状態が悪化し整理が必要な状況でなされるので、債権者間の平等を図るため、手続の実効性を担保するための措置が必要です。このような配慮から、手続開始前の中止命令の制度が設けられました(破24条~27条・民再26条~29条)。

手続開始前の中止命令が出てくる場面を、攻防手段という側面からみます。中止命令の対象には強制執行以外にも様々なものがありますが(破24条1項各号、民再26条1項各号)、以下では強制執行を念頭に検討します。

会社法908条1項(商法9条1項)と民法112条との関係

最判昭和49年3月22日民集28巻2号368頁(百選7事件)について。事案を主張反論で構成して判旨をより理解しやすく。差戻し後の上告審(最判昭和52年12月23日判時880号78頁。百選8事件)もあわせて。

事案は、Y会社の代表取締役Aが、会社を退任させられその登記もなされたのに、Y社代取名義で約束手形を振出したというもの。この手形のうちの1通の裏書譲渡を受けたXがY社に対して約束手形金支払請求。

2014年2月21日

取締役でないのに取締役として登記してある者に対して会社法429条責任を追及する際の主張反論

最判昭和47年6月15日民集26巻5号984頁(百選〔初版〕79事件。S47年判例)や、最判昭和62年4月16日判時1248号127頁(百選73事件。S62年判例)では、登記簿上の取締役に対して責任追及するための理論構成として会社法908条2項を用いています。

主張反論について閃いたのでメモ。会社法の条文は条数のみ。

【破産管財人の第三者性】「破産管財人は差押債権者と類似の法的地位に立つ」とはどういうことか

破産管財人の法的地位には3つの性質が認められます。①破産者と同視され、またはその一般承継人とみなされる性質、②破産債権者の利益代表としての性質、③破産法その他の法律によって付与された特別の地位という性質です(伊藤248頁~)。

破産管財人が差押債権者と類似の法的地位に立つというのは、②の性質を指します。破産管財人の第三者性を判断する際に、差押債権者が「第三者」に含まれるならば、破産管財人も「第三者」に含まれるという論理で判断されることが多いです(最判昭和48年2月16日、最判昭和58年3月22日など)。このことについてメモ。

なお、破産債権者が「第三者」に含まれる説明としては、民法177条に関して説明したこちらを参照。以下、破産法の条文は条数のみ。

【差押えと登記】差押債権者は民法177条の「第三者」か

無権利の法理、登記制度の理想という点を考慮して考えてみます。

「XはAから不動産甲を購入したが、登記は経由していない。他方、YはAに対して500万円を貸し付けたが、Aが弁済期を経過しても弁済しないのでAの不動産甲を競売して満足を得ようと考え、差押えをした」というケースを考えます。

2014年2月20日

【民法467条】債務者「その他の」第三者と、債務者「以外の」第三者

債権譲渡は、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾がなければ、「債務者その他の第三者」に対抗できません(民法467条1項。以下、民法は条数のみ)。

「債務者以外の第三者」に対して債権譲渡を対抗するには、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾を確定日付のある証書によってする必要があります(467条2項・民法施行法5条)。

破産手続開始決定があったとき、会社組織に関する訴えは破産法44条1項で中断する?

最判平成21年4月17日判時2044号74頁(百選16事件)の判示について。株主総会決議不存在確認の訴えが提起され、第1審係属中に会社に破産手続開始決定がされた事案です。

否認権が行使されるときの、主張反論の一例

素材は最判昭和41年4月14日民集20巻4号611頁(百選31事件)です。まず百選の事実の概要に目を通すことを推奨します。

2014年2月19日

破産法162条1項2号の「破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為」(非義務行為)について

既存の債務に対する担保供与 or 債務消滅行為を否認する場合です(破産法162条)。

支払不能の判断基準時について

支払不能の判断基準時を認定する際には、「再生手続開始原因と破産手続開始原因との違いに留意」する必要があります。「再生手続開始原因との違いを意識しておかないと、無闇に支払不能時期を前倒しすることになる」からです(小原将照 司法試験の問題と解説2012 法学セミナー増刊 (別冊法学セミナー no. 216) 308頁)。

この点についてメモ。

2014年2月18日

招集手続の瑕疵と取締役会決議の効力について争われた最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁をメモ

判例を勉強するときは事実関係も把握するのが大事。分かってはいるんですが、雑に読んでしまいがち(とくに百選を読む際)。なので、最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁(百選66事件)についてじっくり読んでみます。

【横領罪】委託信任関係が要件となるのはなぜか

横領罪は、「自己の占有する他人の物を横領した」ときに成立します(刑法252条1項。以下、刑法の条文は条数のみで表記)。明文上、252条1項から確認できるのは、横領罪の客体が「自己の占有する他人の物」であることと、実行行為が「横領」であることです。

しかし、横領罪の成立には、行為者の財物の占有が委託信任関係に基づくこと(委託信任関係)が要件になるとされます(東京高判昭和25年6月19日)。252条1項の横領罪は委託物横領罪と表現されることもあります(単純横領罪とも)。条文に書いてないのになぜこの要件が要求されるのか、考えます。

2014年2月17日

書見台のススメ

教科書を読みながら六法から条文を引いたり、レポートを作成しながら資料を読むの、大変ではないですか?一日程度なら苦痛ではないかもしれませんが、毎日になると相当なストレスです。首が痛くなります。

もし同じようなストレスを抱えているのでしたら、書見台がマジオススメです。


数ある書見台の中でこれをオススメする理由は、値段の割にしっかりしているからです。左右のアームは独立していますし、アームの動きが前後でなくワイパーなので、本の反発に負けることが少ないです(今のところありません)。傾斜も自由に調整できます。プラスチックなので安っぽく見えますが、本を置いてしまえば自分からは台が見えないので気になりません。判例六法プロフェッショナルなどの厚さでも使えるし。検察講義案などのA4サイズの本を置いて使ったこともあります。

これを買ってからパソコンでの資料作成がとても楽になりました。パソコンの画面から横にスライドするだけで資料が読めるのがこんなに楽ちんだとは。頭を移動させずに目線を動かすだけなのがストレス低減になっているようです。机にベタ置きだと、どうしても頭を動かさなければならないので。

書見台のおかげでブラインドタッチができるようになったといっても過言ではありません。肩もこらないし。各法科大学院は新入生に配布するべきだと思います。

クロロホルム事件(最決平成16年3月22日刑集58巻3号187頁)について

クロロホルム事件(最決平成16年3月22日刑集58巻3号187頁。百選Ⅰ64事件)についてメモ。早すぎた結果の実現の問題。

【刑法】答案を「書ける」ようになった後は、「できる」ようになるための勉強方法として、事例問題を作るのも有効だと思う

教科書・判例集を読み、刑法理論の骨格を掴むことができれば、形としては刑法の答案になります。なので、刑法は一番早く答案が「書ける」ようになる科目といわれます(参考:刑法答案の書き方)。

2014年2月16日

取締役権利義務者について、会社法854条による解任の訴えを提起できるか?

できません(最判平成20年2月26日民集62巻2号638頁。H20年判決。百選47事件)。

募集株式発行差止請求権についての要件事実的検討(不公正発行の場合)

違法な募集株式の発行に対する措置のひとつとして、効力発生前の差止請求があります(会社法210条。以下、会社法の条文は条数のみ)。これがなされるときの主張反論について考えます。

なお、他の措置としては、効力発生後(株式発行後)の無効主張(主張方法は訴えのみ。828条1項2号または3号)、関係者の民事責任追及(423条1項、212条参照)があります。また、新株予約権についても同様の差止請求権が認められており(247条)、その主張反論も同じうようなものになると思われます。新株予約権の不公正発行を争う場合にも主要目的ルールが適用されるので(東京高決平成17年3月23日判時1899号56頁(百選98事件)参照)。

2014年2月14日

【メモ】少数株主権の持株要件について

裁判所への申請時には持株要件を充たしていた少数株主が、少数株主権の行使に関わる裁判を得るまでの時点で当該要件を充足し得なくなった場合にも、その請求が認められるでしょうか。

この問題について業務財産検査役の選任請求について争われた最決平成18年9月28日民集60巻7号2634頁(H18年決定。百選59事件)を引いて考えます。この解説はとても分かりやすいです。

会計帳簿閲覧請求権についての要件事実的検討

会計帳簿の閲覧謄写請求の理由は具体的に記載されなければなりませんが、その記載された請求の理由を基礎づける事実が存在することを立証する必要はありません(最判平成16年7月1日民集58巻5号1214頁 百選79事件。H16年判決)。

この判示について、会計帳簿の閲覧請求をめぐる主張反論の構造を考えてみます。

以下、会社法の条文は条数のみで表記します。

【民事裁判】請求を特定する請求原因、理由づける請求原因

民事訴訟法133条2項2号の請求原因は「請求を特定するのに必要な事実」です(民訴規則53条1項かっこ書)。民訴規則53条1項の「請求を理由づける事実」も請求原因です。

特定請求原因事実と理由づけ請求原因事実について、「Yは、Xに対して、300万円を支払え」という請求の趣旨を材料にして考えます。

2014年2月11日

【刑事裁判】冒頭手続と冒頭陳述

審理手続の最初に行われるのが冒頭手続で、冒頭手続の次、証拠調手続の最初に行われるのが冒頭陳述です。

以下、刑事訴訟法=、刑事訴訟規則=規則と略します。


2014年1月31日

【賃貸借】承継される敷金、承継されない敷金

判例の結論は
  • 敷金を交付した賃借人にとって承継される方が有利か否か
で理解できます。

2014年1月29日

2014年1月28日

【債権譲渡】代理人として通知するのはよいが、債権者代位によってする通知はダメ

債権譲渡の対抗要件具備は、譲人による債務者に対する通知か、債務者の承諾によります(民法467条1項)。

が、通知によって対抗要件を備える場合、譲渡人がするのではなく、債権の譲人がする場合があります。債権者でなくなる譲渡人からすればわざわざ通知するのは面倒だし、新たに債権者となる譲受人からすれば債権譲渡を確実なものにしたいからです。

で、譲人が債権譲渡の通知をする場合、代理人として通知する方法と債権者代位によって通知する方法(民法423条)の二つがあり得ます。

2014年1月26日

民法答案の書き方

答案なんて、「自分がわかったことを他人にも通じるように分かりやすく書けばよい」(事例研究 行政法初版はしがき)。

とは言いつつも、形(かた)のようなものもあります。それは民事裁判の争い方です。民事裁判の争い方を背景にして問われている法律解釈学を提示できれば、きっと民法答案になります。民法の問題は事例問題だからです(いわゆる1行問題を除く)。

民事裁判では、原告が請求を立て、請求を退けたい被告が反論し、これに対して原告が再反論し、さらに被告が反論して、というのを繰り返します。繰り返すうちに両者の言い分が尽きたら、提出された主張と証拠から裁判所が原告の請求が認められるか否か判断します。このように、民事裁判の争い方とは、原告が請求を立てる被告が反論する裁判所が判断するという点を構成要素にしています。

2014年1月25日

【相隣関係】根は切ってイイ。枝は切っちゃダメ。

お隣さんちから庭木が伸びてきた場合です。

民法233条は、1項で「隣地の竹木のが境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を削除させることができる」と定め、2項で「隣地の竹木のが境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる」と定めています。

その理由。

2014年1月24日

【憲法判例】 津地鎮祭事件判決と、若干のメモ

憲法判例で名前が付いているものは裁判所の判断部分だけでなく、事実の概要も気合い入れて読みましょう。

津地鎮祭事件(最大判昭和52年7月13日民集31巻4号533頁)は、信教の自由、政教分離の分野でたたき台となる判例です。

2014年1月21日

【伝聞証拠】犯行状況の再現結果を記録した実況見分調書

検証とは五官の作用によって対象を観察し認識することであり、強制処分として行うことが予定されています(刑訴法218条、220条)。この結果を書面にしたものが検証調書であり、刑訴法321条3項で伝聞例外として証拠能力を付与されます。

が、検証を受ける側が承諾すればわざわざ令状を取ってやる必要はないので、任意でも行われます。任意処分として行う検証を実況見分といい、その結果を記載した書面を実況見分調書といいます。捜査官が見て・聞いて・触って・嗅いで・舐めて分かったことを書面に記録したものです。

裁判官は実況見分の現場にはいないでしょうから、実況見分の結果は伝聞で報告されたにすぎません。実況見分調書は、公判期日における供述に代わる書面であり、供述内容(書面の内容)の真実性を立証するために証拠として提出されるものであるので、裁判官にとっては伝聞証拠です。

この実況見分調書の内容が犯行状況や被害状況を再現したものであるとき、被告人や被害者の説明、実況見分現場での供述が含まれることがあります。そうなると単なる検証の結果を記載した書面ではないので、伝聞例外としていかなる要件のもと証拠能力を付与できるかが問題になります。

これについて判示したのが最決平成17年9月27日刑集59巻7号753頁(H17決定。百選86事件)です。今回はこの判例を検討します。

検討の流れは、
  • 実況見分調書が伝聞証拠であることの確認
  • 要証事実は何か(「再現状況」ではなく、「再現通りの犯罪事実の存在」だ)
  • 再現者の供述は現場指示か現場供述か(現場供述だ)
  • 刑訴法326条の同意はあるか(ない)
  • 実況見分調書自体に証拠能力を与えることができるか(刑訴法321条3項の要件検討)、再現者の供述に証拠能力を与えることができるか(321条1項3号 or 322条1項の要件検討)
となります。

2014年1月18日

2014年1月10日

刑法上の「暴行」

刑法典上、「暴行」の文言が登場する条文は14個です(刑法95条、96条の3、98条、100条、106条、107条、176条、177条、195条、207条、208条、223条、236条、238条。77条の「暴動」を含めれば15個。Y2調べ)。

2014年1月7日

憲法は何のための法か

民法は私人間の権利義務に関する紛争解決のための法であり(by椿先生)、刑法は犯罪予防のための法であるといえます。

では憲法は?憲法は何のための法なのでしょうか?