2014年2月28日

なぜ被疑者勾留の根拠条文は刑事訴訟法207条1項なのか

刑事訴訟法207条1項本文は、「前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する」と規定します(以下、刑事訴訟法の条文は法令名省略・条数のみ)。

なぜこれが被疑者勾留の根拠条文になるのか。刑事訴訟法には条文見出しがありませんが、有斐閣六法の編集委員が207条に付けた見出しは【被疑者の勾留】となっていますから、207条が被疑者勾留の根拠条文となるのは間違いないようです。しかし、207条1項の文言は「前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留することができる」という文言にはなっていません。

どうして「その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する」ことが被疑者勾留の根拠を示すのか。これについてメモ。

2014年2月23日

【破産・民事再生】手続開始前の中止命令をめぐる攻防

手続開始申立てから手続開始決定までの話。

手続開始決定があった後は、債権者の自由な個別的権利行使は認められないので(破100条1項・民再85条1項)、新たに強制執行等をすることはできないし、すでにされている強制執行はその効力を失います(破42条1項・2項・民再39条1項)。

このような効果は手続開始決定(破30条・民再33条)によって生じるので、手続開始決定前の強制執行は原則として許されます。ですが、倒産手続開始の申立ては実質的には財産状態が悪化し整理が必要な状況でなされるので、債権者間の平等を図るため、手続の実効性を担保するための措置が必要です。このような配慮から、手続開始前の中止命令の制度が設けられました(破24条~27条・民再26条~29条)。

手続開始前の中止命令が出てくる場面を、攻防手段という側面からみます。中止命令の対象には強制執行以外にも様々なものがありますが(破24条1項各号、民再26条1項各号)、以下では強制執行を念頭に検討します。

会社法908条1項(商法9条1項)と民法112条との関係

最判昭和49年3月22日民集28巻2号368頁(百選7事件)について。事案を主張反論で構成して判旨をより理解しやすく。差戻し後の上告審(最判昭和52年12月23日判時880号78頁。百選8事件)もあわせて。

事案は、Y会社の代表取締役Aが、会社を退任させられその登記もなされたのに、Y社代取名義で約束手形を振出したというもの。この手形のうちの1通の裏書譲渡を受けたXがY社に対して約束手形金支払請求。

2014年2月21日

取締役でないのに取締役として登記してある者に対して会社法429条責任を追及する際の主張反論

最判昭和47年6月15日民集26巻5号984頁(百選〔初版〕79事件。S47年判例)や、最判昭和62年4月16日判時1248号127頁(百選73事件。S62年判例)では、登記簿上の取締役に対して責任追及するための理論構成として会社法908条2項を用いています。

主張反論について閃いたのでメモ。会社法の条文は条数のみ。

【破産管財人の第三者性】「破産管財人は差押債権者と類似の法的地位に立つ」とはどういうことか

破産管財人の法的地位には3つの性質が認められます。①破産者と同視され、またはその一般承継人とみなされる性質、②破産債権者の利益代表としての性質、③破産法その他の法律によって付与された特別の地位という性質です(伊藤248頁~)。

破産管財人が差押債権者と類似の法的地位に立つというのは、②の性質を指します。破産管財人の第三者性を判断する際に、差押債権者が「第三者」に含まれるならば、破産管財人も「第三者」に含まれるという論理で判断されることが多いです(最判昭和48年2月16日、最判昭和58年3月22日など)。このことについてメモ。

なお、破産債権者が「第三者」に含まれる説明としては、民法177条に関して説明したこちらを参照。以下、破産法の条文は条数のみ。

【差押えと登記】差押債権者は民法177条の「第三者」か

無権利の法理、登記制度の理想という点を考慮して考えてみます。

「XはAから不動産甲を購入したが、登記は経由していない。他方、YはAに対して500万円を貸し付けたが、Aが弁済期を経過しても弁済しないのでAの不動産甲を競売して満足を得ようと考え、差押えをした」というケースを考えます。

2014年2月20日

【民法467条】債務者「その他の」第三者と、債務者「以外の」第三者

債権譲渡は、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾がなければ、「債務者その他の第三者」に対抗できません(民法467条1項。以下、民法は条数のみ)。

「債務者以外の第三者」に対して債権譲渡を対抗するには、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾を確定日付のある証書によってする必要があります(467条2項・民法施行法5条)。

破産手続開始決定があったとき、会社組織に関する訴えは破産法44条1項で中断する?

最判平成21年4月17日判時2044号74頁(百選16事件)の判示について。株主総会決議不存在確認の訴えが提起され、第1審係属中に会社に破産手続開始決定がされた事案です。

否認権が行使されるときの、主張反論の一例

素材は最判昭和41年4月14日民集20巻4号611頁(百選31事件)です。まず百選の事実の概要に目を通すことを推奨します。

2014年2月19日

破産法162条1項2号の「破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為」(非義務行為)について

既存の債務に対する担保供与 or 債務消滅行為を否認する場合です(破産法162条)。

支払不能の判断基準時について

支払不能の判断基準時を認定する際には、「再生手続開始原因と破産手続開始原因との違いに留意」する必要があります。「再生手続開始原因との違いを意識しておかないと、無闇に支払不能時期を前倒しすることになる」からです(小原将照 司法試験の問題と解説2012 法学セミナー増刊 (別冊法学セミナー no. 216) 308頁)。

この点についてメモ。

2014年2月18日

招集手続の瑕疵と取締役会決議の効力について争われた最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁をメモ

判例を勉強するときは事実関係も把握するのが大事。分かってはいるんですが、雑に読んでしまいがち(とくに百選を読む際)。なので、最判昭和44年12月2日民集23巻12号2396頁(百選66事件)についてじっくり読んでみます。

【横領罪】委託信任関係が要件となるのはなぜか

横領罪は、「自己の占有する他人の物を横領した」ときに成立します(刑法252条1項。以下、刑法の条文は条数のみで表記)。明文上、252条1項から確認できるのは、横領罪の客体が「自己の占有する他人の物」であることと、実行行為が「横領」であることです。

しかし、横領罪の成立には、行為者の財物の占有が委託信任関係に基づくこと(委託信任関係)が要件になるとされます(東京高判昭和25年6月19日)。252条1項の横領罪は委託物横領罪と表現されることもあります(単純横領罪とも)。条文に書いてないのになぜこの要件が要求されるのか、考えます。

2014年2月17日

書見台のススメ

教科書を読みながら六法から条文を引いたり、レポートを作成しながら資料を読むの、大変ではないですか?一日程度なら苦痛ではないかもしれませんが、毎日になると相当なストレスです。首が痛くなります。

もし同じようなストレスを抱えているのでしたら、書見台がマジオススメです。


数ある書見台の中でこれをオススメする理由は、値段の割にしっかりしているからです。左右のアームは独立していますし、アームの動きが前後でなくワイパーなので、本の反発に負けることが少ないです(今のところありません)。傾斜も自由に調整できます。プラスチックなので安っぽく見えますが、本を置いてしまえば自分からは台が見えないので気になりません。判例六法プロフェッショナルなどの厚さでも使えるし。検察講義案などのA4サイズの本を置いて使ったこともあります。

これを買ってからパソコンでの資料作成がとても楽になりました。パソコンの画面から横にスライドするだけで資料が読めるのがこんなに楽ちんだとは。頭を移動させずに目線を動かすだけなのがストレス低減になっているようです。机にベタ置きだと、どうしても頭を動かさなければならないので。

書見台のおかげでブラインドタッチができるようになったといっても過言ではありません。肩もこらないし。各法科大学院は新入生に配布するべきだと思います。

クロロホルム事件(最決平成16年3月22日刑集58巻3号187頁)について

クロロホルム事件(最決平成16年3月22日刑集58巻3号187頁。百選Ⅰ64事件)についてメモ。早すぎた結果の実現の問題。

【刑法】答案を「書ける」ようになった後は、「できる」ようになるための勉強方法として、事例問題を作るのも有効だと思う

教科書・判例集を読み、刑法理論の骨格を掴むことができれば、形としては刑法の答案になります。なので、刑法は一番早く答案が「書ける」ようになる科目といわれます(参考:刑法答案の書き方)。

2014年2月16日

取締役権利義務者について、会社法854条による解任の訴えを提起できるか?

できません(最判平成20年2月26日民集62巻2号638頁。H20年判決。百選47事件)。

募集株式発行差止請求権についての要件事実的検討(不公正発行の場合)

違法な募集株式の発行に対する措置のひとつとして、効力発生前の差止請求があります(会社法210条。以下、会社法の条文は条数のみ)。これがなされるときの主張反論について考えます。

なお、他の措置としては、効力発生後(株式発行後)の無効主張(主張方法は訴えのみ。828条1項2号または3号)、関係者の民事責任追及(423条1項、212条参照)があります。また、新株予約権についても同様の差止請求権が認められており(247条)、その主張反論も同じうようなものになると思われます。新株予約権の不公正発行を争う場合にも主要目的ルールが適用されるので(東京高決平成17年3月23日判時1899号56頁(百選98事件)参照)。

2014年2月14日

【メモ】少数株主権の持株要件について

裁判所への申請時には持株要件を充たしていた少数株主が、少数株主権の行使に関わる裁判を得るまでの時点で当該要件を充足し得なくなった場合にも、その請求が認められるでしょうか。

この問題について業務財産検査役の選任請求について争われた最決平成18年9月28日民集60巻7号2634頁(H18年決定。百選59事件)を引いて考えます。この解説はとても分かりやすいです。

会計帳簿閲覧請求権についての要件事実的検討

会計帳簿の閲覧謄写請求の理由は具体的に記載されなければなりませんが、その記載された請求の理由を基礎づける事実が存在することを立証する必要はありません(最判平成16年7月1日民集58巻5号1214頁 百選79事件。H16年判決)。

この判示について、会計帳簿の閲覧請求をめぐる主張反論の構造を考えてみます。

以下、会社法の条文は条数のみで表記します。

【民事裁判】請求を特定する請求原因、理由づける請求原因

民事訴訟法133条2項2号の請求原因は「請求を特定するのに必要な事実」です(民訴規則53条1項かっこ書)。民訴規則53条1項の「請求を理由づける事実」も請求原因です。

特定請求原因事実と理由づけ請求原因事実について、「Yは、Xに対して、300万円を支払え」という請求の趣旨を材料にして考えます。

2014年2月11日

【刑事裁判】冒頭手続と冒頭陳述

審理手続の最初に行われるのが冒頭手続で、冒頭手続の次、証拠調手続の最初に行われるのが冒頭陳述です。

以下、刑事訴訟法=、刑事訴訟規則=規則と略します。