2015年12月24日

「停止条件不成就の利益を放棄したとき」って?

最判平成17年1月17日民集59巻1号1頁は、次のように判示しました。

破産債権者は、破産者に対する債務がその破産宣告のときにおいて期限付きまたは停止条件付きである場合には、特段の事情のない限り、期限の利益または停止条件不成就の利益を放棄したときだけではく、破産宣告後に期限が到来しまたは条件が成就したときにも、旧99条後段(現67条2項後段)の規定により、その債務に対応する債権を受働債権とし破産債権を自働債権として相殺することができる(模範小六法1398頁より)。

「停止条件不成就の利益を放棄したとき」ってなんだろう。どんな場面?以下、解説。

「真正に作成されたものであることを供述したとき」(刑訴法321条3項)

自分が作成したという供述(作成名義の真正)と、検証結果を正しく記載したという供述(記載内容の真正)のこと。

2015年12月18日

相殺の担保的機能?

相殺には担保的機能があるらしい。でも担保的機能って何なのでしょう。相殺についての定めは、民法399条~724条「第三編 債権編」の中の、399条~520条「第一章 総則」の中の、474条~520条「第五節 債権の消滅」にあります(505条~512条。「第二款 相殺」のところ)。規定の位置からは、債権の消滅原因の一つであるにすぎないように思えます。債権の一消滅原因にすぎないものに、何で担保的機能があるのでしょうか。

消極的確認の訴えの訴訟物

判例(最判昭和40年9月17日民集19巻6号1533頁)の考え方。

消極的確認の訴えの訴訟物は、積極的確認の訴えの訴訟物と対比して考えるとわかりやすいです。

2015年11月27日

フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約のユーザーが民事再生手続開始決定を受けた場合、リース契約を解除したリース会社によるリース物件の返還請求権が民事再生手続において別除権・取戻権のいずれに処遇されるか

東京地判平成15年12月22日(判タ1141号279頁、金法1705号50頁、商法(総則 商行為)判例百選〔第5版〕79事件)を読んで。

フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約は担保?


「リース会社は、契約締結時にユーザーに対して与信した総リース料債権相当額について、ユーザーの信用状態が悪化したときにはリース期間満了前にリース物件の返還を請求することができるとの約定によって、これを担保されているもの」。

「リース会社は、リース料債権を被担保債権とする担保権(別除権)を有するものとして処遇されると解する(いわゆる担保的構成)」。

担保の目的は?


「ユーザーの有するリース物件上の利用権」。

担保の実行方法は?


「担保目的物である利用権をユーザーからリース会社に移転させること」。

または、リース契約の解除(解除によってユーザーから利用権を奪うこと)。

借主の信用状態悪化の際には貸主は無催告でリース物件の返還を求めることができる旨の特約がある場合には、この特約の行使。

リース物件の返還請求は担保権の実行ではないの?


別除権の行使によるものというよりは、別除権の行使によってリース会社に物件の完全な所有権が実現し、この所有権によるものと考える方が正確。

なので、返還請求自体は、取戻権の行使。

(以上)



2015年11月24日

養子が死亡した場合、養親の実子は相続人になるか?

なります(第三順位)。

『注釈民法(24)』208頁に、「養子からみて、養父母の実子は兄弟姉妹である」と書いてあります(「兄弟姉妹」とは、民法889条1項2号の「兄弟姉妹」のことです)。

2015年11月17日

法律上保護された利益説って何?

取消訴訟の原告適格について、判例は、法律上保護された利益説をとっています。

これは一般に、
  1. 当該処分が原告の一定の利益を侵害するものであり(不利益要件)、
  2. 当該利益が当該処分に関する法令の保護する範囲に含まれ(保護範囲要件)、
  3. 当該法令が当該利益を一般的な公益としてではなく原告自身の利益として個別的に保護する趣旨のものである(個別保護要件)、
ときに、原告適格を認めるものです(小早川光郎『行政法講義(下Ⅲ)』257頁)。

(追記するかも)

2015年10月6日

訴因の特定・明示について(検討方法)

最決平成26年3月17日刑集68巻3号368頁についての平成26年度重要判例解説184頁(宮木康博)を読んで、訴因が特定・明示されているかの検討方法をメモりたくなったので。詳細は上記解説参照。

故意否認と危機否認(平成16年改正前破産法=旧破産法による分類)

現行法では、詐害行為と偏波行為に分類されている否認権ですが、旧破産法では故意否認と危機否認に分類されていました。旧破産法での分類がどのようなものだったのか、条文と併せてメモ。

2015年10月1日

本証と反証

本証とは、裁判官に事実についての確信を抱かせることを目的とする立証活動。

反証とは、事実についての裁判官の心証を動揺させることにより、真偽不明の状態をもたらすことを目的とする立証活動。

イメージとしては、「本証はゴールしなければだめだが、反証はジャマできれば成功」みたいな。

2015年7月31日

民法733条が違憲なのは、再婚禁止期間は100日または101日あれば足りるから

民法733条1項は、「女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と定めます。違憲の疑いがある規定です。

これが違憲であると主張する説では、再婚禁止期間は100日または101日あれば足りることを根拠に挙げられることがあります。100日(101日)空ければ、民法772条2項の嫡出推定が被らないからです。

以下、日付を挙げて解説。あくまで「100日(101日)あければ」についての解説ですので。

2015年7月30日

民法の「第三者」達

民法の「第三者」です。解説が見つからなかった「第三者」もいるので、どんな人が「第三者」か書いていないのもあります。抜けがあるかもしれませんので、ご注意ください。

2015年6月17日

「第三者」と「第三債務者」と「第三取得者」

「第三者」


当事者以外の人です。

売買契約では、売主と買主が当事者です。売主と買主以外の人は、この売買契約の第三者です。民法94条の「第三者」とか、民法177条の「第三者」とか、さまざまな法律が規定するそれぞれの第三者がいます。大抵は、ある法律関係に対して法律上の利益を有する人とか、正当な利益を有する人が「第三者」になります。

「第三債務者」


債務者の債務者です。

金融機関が融資する場面で考えます。金融機関Aが個人商店を営むBさんに100万円貸しました。が、Bさんの経営は苦しくなってきており、返済が滞っています。Aは何とか貸金債権を回収したい。Bさんは取引先C社に商品を売っているので、C社に対して売掛債権を持っています。Aとしては、C社がBさんに対して支払う買掛金を、Bさんにではなく自分に払ってもらえれば、貸金債権を回収できます。これを実現するのが民事執行法に基づく債権執行です。

ここでのC社が、第三債務者です。C社は、債権者Aの債務者Bの債務者なので、Aにとって第三債務者と表現されます。民事執行法145条など参照。

「第三取得者」


担保物権が設定された後に、担保の目的となった物を取得した人です。

金融機関Aが個人商店主Bさんに100万円貸した上の例で、Aの100万円の債権を担保するために、B所有の不動産甲(空き地)に抵当権を設定し登記を経たという場面で考えます。甲には抵当権が設定されていますが、抵当権者は甲の金銭的価値(換価権)を把握しているにすぎません(非占有)。甲の所有者であるBさんは甲を自由に使えますし、誰かに使わせる、売るといったことも自由です。Bさんは経営がピンチなので、甲を売って資金を作りたいと考えました。そんなBさんの前に、どこかの空き地に丸太を保管しておきたいDさんが現れました。DさんはBさんから甲を買って、甲に丸太を保管しはじめました。

このDさんが甲の第三取得者です。Bさんの返済が滞れば、Aは抵当権を実行して甲を換価し、売却代金から貸金債権を回収します。抵当権をはじめとした担保物権には追及力があるので、Aの抵当権に後れるDの所有権は、抵当権実行により消滅してしまいます(民事執行法59条)。抵当権の実行によってDさん以外の人が甲を買って売却代金を納付すれば、以降はその人が甲の所有者です(民事執行法79条)。第三取得者は債務を負っているわけではありませんが、責任を負担しているのです。

以上、簡単に。

2015年4月28日

責任能力とは何か

「責任能力は、違法行為における意思能力である」と表現されてました(新版注釈民法(1)247頁)。この意味について考えます。