2014年3月31日

境界損壊罪について

境界損壊罪が成立するには、境界を損壊するだけで足りるか、さらに認識が不能になるという結果の発生を要するかという問題があります。判例は、
「境界損壊罪が成立するためには、境界を認識することができなくなるという結果の発生することを要するのであって、境界標を損壊したが、未だ境界が不明にならない場合には、器物損壊罪が成立することは格別、境界損壊罪は成立しない」
としています(最判昭和43年6月28日刑集22巻6号569頁・百選Ⅱ80事件)。

このように判示された理由について簡単にメモ。

2014年3月29日

行政手続法の適用除外が規定されていることが、処分性を肯定する理由となるのはなぜか

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行訴法3条2項)とは、「公権力の主体たる国又は公共団体の行う行為のうちで、その行為により直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」といわれます(最判昭和39年10月29日民集18巻8号1809頁・百選Ⅱ156事件)。

この処分性を肯定する形式的理由として、個別法に行政手続法の適用除外の定めがあることが挙げられます。どうしてこれが処分性を肯定する理由となるのかよく分からなかったのですが、最近分かるようになったので、備忘としてメモしておくことにします。

2014年3月28日

行政文書の開示義務

原則として、行政文書の開示請求は認められます(行政機関の保有する情報の公開に関する法律〔情報公開法〕5条柱書)。行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければなりません。

例外的に、行政文書に不開示情報が記載されている場合にのみ、開示されないにすぎません。以下、不開示情報について。情報公開法5条を整理するための記事。

2014年3月27日

【憲法判例】「板まんだら」事件について簡単に

裁判所法3条の「法律上の争訟」の定義を示した最判昭和56年4月7日(民集35巻3号443頁・百選Ⅱ190事件)について。「法律上の争訟」の定義が書ければそれでイイ訳ではなくて、憲法ではどの条文の問題なのかを指摘することを忘れないように。

2014年3月26日

【答案の書き方】議員定数不均衡を争うときの基本

基本となるのは、最大判昭和51年4月14日(民集30巻3号223頁・百選Ⅱ153事件)です。以下、S51年判例と呼びます。山元一先生の百選解説、マジ分かりやすいのでオススメです。

ではさっそく。

2014年3月14日

規制目的二分論の目的

規制目的二分論とは、経済的自由権を規制する立法について、消極目的規制の法については、積極目的規制の法よりも合憲性審査を厳密にするべきという考え方です。ここでいう消極目的とは、国民の生命・健康に対する危険の防止を目的とすることをいい、積極目的とは、社会公共の便宜を促進し、社会的・経済的弱者の保護を目的とすることをいいます。

目的二分論の目的について混乱しがちなので、メモしておきます。

2014年3月13日

【憲法判例】北方ジャーナル事件についてメモ

最大判昭和61年6月11日(民集40巻4号872頁。百選Ⅰ72事件)です。北方ジャーナル事件を用いて、出版差し止めの仮処分が主張され、それに対する損害賠償請求の反論をし、問題点の所在を明確にしたうえで判旨につなげます。

この事件は民事保全法制定前のものですが、民事保全法に基づいて仮処分を申立てる場合を考えます。登場人物の表記は百選Ⅰ72事件に従います。

【憲法判例】よど号ハイジャック記事抹消事件についてメモ

最大判昭和58年6月22日(民集37巻5号793頁。百選Ⅰ16事件)について。旧監獄法時代の事件ですが、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律についても若干言及します。主張反論形式で記事にしますが、実際の攻防等は相違があります。正確なものは民集等を参照してください。

2014年3月12日

【憲法判例】泉佐野市民会館事件をメモ

最判平成7年3月7日(民集49巻3号687頁。百選Ⅰ86事件)について。主張反論形式で書きますが、実際の訴訟でなされた攻防とは相違があると思います。正確な情報が欲しい方は民集などを参照してください。

2014年3月11日

【憲法判例】京都府学連事件の主張反論

京都府学連事件(最大判昭和44年12月24日刑集23巻12号1625頁。百選Ⅰ18事件)の判決をより理解するため、判決に至るまでの議論を整理してみます。

2014年3月10日

手形法・小切手法の勉強について

司法試験的には、手形法・小切手法は民事系の短答式試験に2問ほど出題されるだけです。

2014年3月9日

【民事再生】再生債権が確定されるまでの流れ

民事再生手続は、再生債権の個別的権利行使を禁止し、再生債権者を「みんな、これしか払えないけどゴメンね」と平等に取扱い、それで我慢してもらうことで、債務者の再生を図ります。なので、対象になる再生債権(民再84条1項)を確定する必要があります。

再生債権が確定するまでの流れをメモ。

2014年3月7日

【民事再生】担保権消滅許可の手続

手続は、
  • ①再生債務者等による担保権消滅許可申立て
  • ②目的物の価額に異議のある担保権者による価額決定の請求
  • ③裁判所による価額の決定
  • ④価額に相当する金銭の納付
  • ⑤配当の実施
の順番で進みます。

別除権は再生手続によらないで行使できるので(民事再生法53条2項。以下、民事再生法の条文は法令名省略)、例えば、抵当権者は自由に抵当権を実行できます(民執法180条以下)。ですが、別除権行使が再生の妨げになることも事実です。これに対処するために、民事再生手続では、制度として担保権を消滅させることが可能になりました(148条以下)。

別除権行使をストップさせる方法には、他に別除権協定があります。別除権行使を思いとどまってもらう合意です。「分割で担保物件の評価額を払うから、担保を実行しないでね」という約束です。

以下、各手続について解説。

2014年3月6日

相殺の抗弁と重複起訴禁止原則についてメモ

民訴百選38①②事件(①最判平成3年12月17日民集45巻9号1435頁、②最判平成10年6月30日民集52巻4号1225頁)とA12事件(最判平成18年4月14日民集60巻4号1497頁)を読んでいて、ちょっと思うことがあったのでメモ。

2014年3月5日

一部請求と時効の中断

時効は、裁判上の請求によって中断します(民法147条1号・149条)。

「裁判上の請求」とは訴訟物のことを指すので、時効中断効は訴訟物の範囲に生じます。判決が既判力を有するのは「主文に包含するもの」の範囲に限られ(民訴法114条1項)、「主文に包含するもの」とは訴訟物のことだからです。

債権者代位と当事者適格、二重起訴についてメモ

債権者代位(民法423条)についてメモ。

2014年3月1日

商法526条2項について。商人間の売買において、目的物に瑕疵があったときには代金減額請求ができるのか?

できません。最判昭和29年1月22日民集8巻1号198頁(百選〔第3版〕54事件)が、
「商事売買の場合でも、売買の目的物の瑕疵又は数量の不足を理由として、契約を解除し、又は損害賠償若しくは代金の減額を請求するのは、民法の売買の規定に依拠すべきものである。しかして、民法の規定によれば、買主が売買の目的物に瑕疵あることを理由とするときは、契約を解除し、又は損害賠償の請求をすることはできるけれども、これを理由として代金の減額を請求することはできない。」
と判示しており、これが判例です。

以下、問題点の所在をメモ。