2022年3月4日

原則どおりに「売買は賃貸借を破る」パターン

結論。例えばですが、 大きめの建物(マンションや店舗、物流倉庫)の屋根を賃貸借して、屋根賃貸の借主が太陽光発電設備を設置して、その建物が売却されて新所有者が屋根の太陽光発電設備を撤去してと言った場合、屋根の借主は負けます。しょうがないですが、太陽光発電設備は撤去しなければなりません。


結論は以上なのであとは余談です。


マンションでも店舗でもそうなんですが、なんのために賃貸物件を買うかといったら賃料収入を得るためなんですね。なので借主を追い出すことは普通しませんし、むしろ借りていてくれてありがとうのスタンスです。現代では。


ですが昔は違ったんですね。戦後の住宅事情が逼迫した時代は古めかしい物件を安く買ったら借主を追い出してたんです。建て替えて住みやすくして自分で住んだり。「売買は賃貸借を破る」で破りまくりだったんですね。


これはマズいということで社会問題になって制度ができました。今でいうと借地借家法です。借主の地位を保護して住み続けられるようにしました。借地借家法の31条ですね。


(建物賃貸借の対抗力)

第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


ざっくりいうとこういう意味です。

X氏はY氏から建物を借りて使い始めています。その後でY氏はZ氏にこの建物を売却しました。この場合、X氏とY氏の賃貸借契約は貸主をZ氏とする賃貸借契約になります。


話を現代に戻すと、賃貸物件を買った買主はそもそも借主を追い出さないのですが、借主も法的に守られているので追い出されないのです。建物の借主ならば


借主は借主でも屋根の借主ならどうでしょうか。


私が屋根に太陽光設備が載っている物件の買主ならば屋根借主を追い出さないですが(屋根賃料込で物件の値段考えてますし)、現実的な事情は置いといて、屋根借主は法的に守られているのでしょうか?という問題です。屋根の賃貸借契約は借地借家法31条の「建物の賃貸借」といえるかどうかですね。


これ、屋根の賃貸借は「建物の賃貸借」には当たらないんですね(例えばこちらARES不動産証券化ジャーナルVol.18のP92「屋根貸し太陽光発電事業における法的問題」)。なので、借地借家法31条を使えず、また賃借権は登記できないので結局屋根の賃貸借は対抗要件を具備できないのです。


だから仮に賃貸物件の買主が屋根を借りて太陽光発電事業を行っている人にパネルを撤去しろと請求すると、屋根借主は撤去するしかないのです。


以上です。

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