2013年8月22日

共有物を目的とする賃貸借の解除。民法544条1項か、252条か?

共有者が共有物を目的とする賃貸借契約を解除することは、民法252条本文の「管理に関する事項」にあたるとされました(最判S39年2月25日民集18巻2号329頁)。

他方、民法544条には、解除の不可分性が規定されています。「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から……のみすることができる」とされています。

どうして、共有物を目的とする賃貸借の解除には、民法544条が適用されないのでしょう?この判決は、民法544条を無視してるのではないか?・・・疑問です。今日はこれを考えます。



民法544条の目的は、①多数の側の一人が知らぬ間に、契約が解除されることがないようにするため、②個別的解除を認めると、ある者との間では法律関係が消滅するが、ある者との間では法律関係が存続することになり、法律関係が複雑になるから、それを回避するため、の2点にあるようです。

複数人の共有者が一方当事者となる賃貸借で、共有者側が解除するか否かを考える場合、当該賃貸借の解除を保存行為と考えなければ、共有者側全員かもしくは過半数の持分をもつ者がどうしようか協議するでしょう。

「保存行為は、各共有者が(単独で)することができる」から、仮に、当該解除を保存行為とすると、持分がわずかな者であっても、当該賃貸借を終了させることができます。これでは、共有者の何人かが知らない間に賃貸借が解除されることになってしまいます。

これを、共有者がする解除は民法252条の管理行為である、としておけば、その解除は、結局、当該共有者全員の意思による解除と扱うことができます。

なぜなら、全員が解除に同意しなくても、過半数が同意すれば、残りの者はその決定に拘束されるからです(これを、多数者の横暴だー、とは言えないですね。多数決に拘束されるのが嫌なら、単独所有を求めることができますから)。

昭和39年の判例は、民法544条を無視しているのではないのですね。

もし、厳密に民法544条が適用されるとすると、過半数を超える持分をもつ者が解除に賛成しても、反対の持分がある限り、解除できなくなってしまいます。

以上のような次第で、共有者からの共有物の賃貸借解除は、管理行為とされたのでした。


余談

「民法544条1項か、252条か」という対立ではなくて、「管理行為か、保存行為か」の対立が本質だったのですね・・・

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