2013年7月31日

推定される無過失、推定されない無過失

即時取得(民法192条)の無過失は推定されますが、取得時効(短期。民法162条2項)の無過失は推定されません。

なぜでしょうか?

 民法188条は「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する」と規定しています。占有は、即時取得においても取得時効においても要件とされています。それなら、即時取得者のする占有はもちろん、時効取得者のしている占有にもこの民法188条が適用されて、いずれの無過失も推定されるのでは?と思うかもしれません。

ですが、このように考えるのは間違っています。

即時取得の無過失が推定されるのは、民法188条の適用を受けるからです。ここで注意しなければならないのは、民法188条によって「適法に有するもの」と推定される占有は、前主の占有であるという点です。即時取得は「取引行為によって」動産の占有を始めた者に適用されます。即時取得者は、民法188条によって適法(=処分権がある)と推定された占有を前主から承継します。つまり、即時取得者が現在している占有が適法と推定されるからではなく、適法と推定された占有を前主から受け継いだから、無過失が推定されるわけです。

そうすると、取得時効に無過失が推定されない理由も明らかです。即時取得における前主のような存在が、取得時効ではいないからです。どんな占有でも民法188条が適用されるわけではないということです。

以上です(要件事実が分からない方は問題研究30講の第1部を繰り返すことをお勧めします。問題研究を10回ほど繰り返せば、要件事実的発想が自然と出てくるようになります)。

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