2014年11月18日

危険の現実化の「危険」について

刑法上の因果関係を判断する一方法です。最近割と人気。行為の危険が結果に現実化したと考えられる場合に、刑法上の因果関係を肯定する理論です。
この理論のいう「危険」とは何か。

たとえば刑法199条は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と規定します。これは、文言を素直に読めば、被告人が「人を殺した」のならば殺人罪と判断しなさいと裁判官に命じている裁判規範です。
「人を殺した」ならば殺人罪でお縄ですよということなので、刑法199条は「人を殺すな」という規範を一般の人に向けているものでもあります。行為規範(禁止規範)であるわけです。
なぜ禁止されているのかといえば、「人を殺す」行為には、人の生命活動を停止させる危険があるからです。法益である生命を護るため、生命を害する危険を禁止しているのです。
つまり、ここでの「危険」とは刑法が発生させまいとしている危険であり、それはすなわち刑法が禁止している行為が有している法益侵害の危険なのです。
死因が同一であるならば他者の行為が介在しても因果関係は肯定されないといわれますが、これは死因を形成したのが行為の危険そのものであり、死亡結果は行為の危険によって引き起こされたものといえるからです。
以上まとめますと、危険の現実化によって刑法上の因果関係を考えるというのは、刑法が禁止している危険が結果として現実になったかどうかを考えるということです。

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