2014年11月26日

「横領罪の構成要件は背任罪の構成要件に包含される」は本当か

「横領」の意義について領得行為説を、背任罪の本質について背信説を前提とした場合、横領罪の構成要件は背任罪の構成要件に包含されるといわれます。
本当かどうか、確かめます。
 
横領罪は、①委託信任関係に基づいて、②自己が占有する、③他人所有の物を、④横領したときに成立します。①~④が背任罪の構成要件に含まれていることを確かめます。
 
①委託信任関係について。背任罪は「他人のためにその事務を処理する者」がなす身分犯です。すなわち、背任罪の構成要件には、事務処理についての委託信任関係が要求されます。横領でも背任でも委託信任関係が要求されているので、①は背任罪の構成要件に包含されているといってよいでしょう(重なり合うと表現した方が正確と思いますが)。
 
②自己が占有するについて。背任罪の事務処理の内容には財物の占有もありえます。②は背任罪の構成要件に包含されています。
 
③他人所有の物について。背任罪の客体は「財産上の損害」です。これは、財産上の利益または財物についての損害と読み替えることができます。財物には他人所有の物も含まれますので、③は背任罪の構成要件に包含されています。
 
④横領とは、不法領得の意思を実現するすべての行為と表現されます(領得行為説)。一方、背任罪における「その任務に背く行為」とは、委託信任の趣旨に反する行為です(背信説)。これには領得行為のみならず毀棄・隠匿行為も含まれます。したがいまして、④は背任罪の任務違背行為に含まれています。
 
ちゃんと含まれていました。したがって、両罪の検討順序は以下の通りになります。
 
背任罪には罰金刑がありますが横領罪は懲役刑のみで罰金刑を選択できないので、背任罪の方が軽いです。なので、背任罪=一般法、横領罪=特別法の関係にあるとされます。ゆえに、成立範囲が重なり合うときは、横領罪の成立をまず検討し、それが成立しない場合に背任罪を検討するという順序になります(間接正犯を先に検討し、次に共同正犯を検討する、みたいな)。
 
以上です。

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