2014年12月4日

員外貸付の効果

無効です(たぶん)。

員外貸付とは、信用金庫や信用組合、農協などの協同組織の金融機関がその会員以外の者に対して行う貸出のことです。
 
信用金庫が行う員外貸付について最高裁の判例はありません。が、労働金庫に関する判例(最判昭和44年7月4日民集23巻8号1347頁)では無効とされたので、同じ協同組織である信用金庫の場合でも無効とされると思われます。
 
参考までに申し上げると、上記判例では員外貸付は無効とされましたが、員外貸付と同額の不当利得返還請求権が労働金庫にはあるので、員外貸付を担保するために設定された抵当権は不当利得返還請求権を担保する意義を有しますから、員外貸付を受けた者が付従性による抵当権の無効を主張することは信義則上許されないとされました。
 
無効の理由は、員外貸付が法人の目的の範囲内の行為ではないからです。
 
民法34条は「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と定めます。信用金庫は法人なので(信用金庫法2条)、民法34条に従います。
 
民法34条には「法令の規定に従い」とありますから、信用金庫の事業について定める信用金庫法53条をみます。1項は、
「信用金庫は、次に掲げる業務を行うことができる。
一 預金または定期預金の受け入れ
二 会員に対する資金の貸付け 
三 会員のためにする手形の割引 
四 為替取引」 
と定めます。

貸付や手形割引などの与信取引については、「会員に対する」とか「会員のためにする」という留保がついています。預金や為替取引についてはこのような留保がついていないことと比べてみても、信用金庫法は、「与信取引は原則として会員とだけだよ!」という態度をとっていると考えられます。
 
信用金庫は地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関です。その会員資格は「その信用金庫の地区内」の住民や労働者等と限定されています(信用金庫法10条)。営利企業である銀行とは違うのです。
 
このような次第で、多分、員外貸付は「目的の範囲内」とはいえないでしょう。

なお、例外的に許容される員外貸付もあります。信用金庫法53条2項、施行令8条1項参照。
 
以上です。

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