2015年10月6日

故意否認と危機否認(平成16年改正前破産法=旧破産法による分類)

現行法では、詐害行為と偏波行為に分類されている否認権ですが、旧破産法では故意否認と危機否認に分類されていました。旧破産法での分類がどのようなものだったのか、条文と併せてメモ。

旧破産法72条 左ニ掲クル行為ハ破産財団ノ為之ヲ否認スルコトヲ得
  • 一 破産者カ破産債権者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル行為 但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行為ノ当時破産債権者ヲ害スヘキ事実ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  • 二 破産者カ支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタル後ニ為シタル担保ノ供与、債務ノ消滅ニ関スル行為其ノ他破産債権者ヲ害スル行為 但シ之ニ因リテ利益ヲ受ケタル者カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタルトキニ限ル
  • 三 前号ノ行為ニシテ破産者ノ親族又ハ同居者ヲ相手方トスルモノ 但シ相手方カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止又ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  • 四 破産者カ支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタル後又ハ其ノ前30日内ニ為シタル担保ノ供与又ハ債務ノ消滅ニ関スル行為ニシテ破産者ノ義務ニ属セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ破産者ノ義務ニ属セサルモノ 但シ債権者カ其ノ行為ノ当時支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコト又ハ破産債権者ヲ害スヘキ事実ヲ知ラサリシトキハ此ノ限ニ在ラス
  • 五 破産者カ支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタル後又ハ其ノ前6月内ニ為シタル無償行為及之ト同視スヘキ有償行為

このうち、1号が故意否認です。

2号~4号が危機否認。

5号が無償行為否認を定めます。

「故意否認は、破産者が破産債権者を害することを知ってなした否認類型であり、否認の理由を破産者の詐害意思におく否認であって、民法上の詐害行為取消権とその趣旨を同一にする。……危機否認は、破産者が支払停止または破産の申立の後、場合によってその前30日以内にした担保供与や弁済その他債務消滅に関するものの否認類型であり、破産者の財産状態が悪化した財産的危機時期におけるもので、破産においてはじめて認められるという意味で特別否認の名がある」(斉藤秀夫・麻上正信・林屋礼二編『注解破産法【第三版】上巻』422頁〔青林書院〕)。

以上、メモ。

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