2014年4月19日

事後強盗罪における暴行・脅迫が、窃盗の機会継続中になされたものでなければならない理由

事後強盗罪(刑法238条)の「暴行または脅迫」は、236条と同様、相手の反抗を抑圧するに足る程度のものが要求されます。そして、これは、窃盗の機会継続中に行われたものでなければなりません(最決平成14年2月14日刑集56巻2号86頁・百選Ⅱ(5版)38事件)。

その理由について。

事後強盗とは、窃盗犯人が、財物取戻し防止 or 逮捕免脱 or 罪跡隠滅等の目的のために、暴行・脅迫をした場合に成立する犯罪で、法的には強盗として取り扱われるものです(刑法238条)。

事後強盗の客観的な行為態様は、窃取行為と暴行行為(脅迫行為)からなります。窃盗罪(235条)と暴行罪(208条) or 脅迫罪(222条1項)が併合罪とされる場合、その加重は、235条の10年に、208条 or 222条の2年を加えたものが法定刑の長期になります(45条・47条ただし書)。つまり、1月以上12年以下の範囲が法定刑となります。

これに対して、事後強盗は「強盗として」扱われますから、法定刑は5年以上20年以下です(236条・12条1項)。

このように、事後強盗は、単なる窃盗+暴行(脅迫)の併合罪よりも重く扱われます。これは、刑法が事後強盗を窃盗の加重類型ではなく、罪質を変更して強盗としていることのあらわれです(大判明治43年11月24日刑録16巻2125頁)。

つまり、事後強盗における暴行・脅迫が窃盗の機会継続中になされたものでなければならない理由は、実質的に強盗という評価を与えるため、すなわち、単なる窃盗+暴行(脅迫)の併合罪と区別するためです。

窃盗の機会継続中か否かの判断は、時間的・場所的接着性を考慮したうえで、犯人が被害者側から追及され逮捕され得る状況(追及可能性)が継続しているか否か、すなわち安全圏に脱したか否かによってなされることになるでしょう(長井長信百選Ⅱ83頁)。

以上です。

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