2014年4月1日

【答案の書き方】公務員の表現の自由が問題となるとき(主張反論の一例)

公務員の表現の自由が問題となるときは、猿払事件上告審(最大判昭和49年11月6日刑集28巻9号393頁・百選Ⅰ13事件)や、猿払事件第1審(旭川地裁昭和43年3月25日下刑集10巻3号293頁・百選Ⅱ200事件)、そして、堀越事件(最判平成24年12月7日刑集66巻12号1337頁・百選Ⅰ14事件)を踏まえて論じることが大事です。

どう論じれば分かりやすくなるか、少し思いついたので、備忘としてメモ(ホントに単なる備忘です)。

検察官の主張


まずは、公務員の行為が、人事院規則14-7第6項のいずれに該当するかを指摘し、ゆえに国家公務員法102条1項の「政治的行為」に該当するので、国家公務員法110条1項19号の罪が成立することを明らかにします。

検察官の主張の中で、

  • 検察官の主張①:公務員なので、被告人に表現の自由は保障されないこと(∵特別権力関係論的)
と、
  • 検察官の主張②:猿払事件上告審判決

を出します。

論理としては、「公務員なので憲法上の権利の享有主体ではない。仮に享有主体であるとしても、猿払事件上告審判決によれば被告人の行為に対して刑罰を科することができるので、問題ない」というもの。

猿払事件上告審は、
「公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである」。合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものか否かの判断は、「禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の3点から検討することが必要である」
と判示し、特に禁止よって得られる利益と喪失する利益の均衡を検討した部分で、
公務員の政治的行為を、当該行為の「もたらす弊害の防止をねらいとして禁止するときは、同時にそれにより意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎ」ない
としているところがポイントです。

被告人の反論


被告人の反論は、

  • 反論①:国公法102条1項と人事院規則14-7が違憲であること
と、
  • 反論②:国公法102条1項・人事院規則14-7が、法令としては合憲であるとしても、被告人に適用するのは違憲であること
が中心となります。

反論①の論拠は、漠然性or過度の広汎性のゆえに無効、白紙委任なので無効など。漠然性・過度の広汎性がだめな理由は、畏縮効果をキーワードにして論じよう。白紙委任なので無効をいうときは、国会が「唯一の立法機関」であることの意義(白紙委任はなぜだめなのか)を論じること。

反論②の根拠は、法令の合憲限定解釈が不可能or合憲限定解釈は可能であるが、違憲的に適用したので、適用違憲というもの。この点については、百選Ⅱ200事件(芦部信善)解説参照。

私見


以上から論じるべき問題点は、

  • 私見①:公務員は憲法上の権利の享有主体か
と、
  • 私見②:国公法102条1項と人事院規則14-7は法令として違憲か
と、
  • 私見③:被告人に国公法102条1項と人事院規則14-7を適用できるか(合憲限定解釈の可否)
の3点です。

法令として違憲なのは刑罰を定める国公法110条1項19号なのでは?国公法110条1項19号を合憲限定解釈できるかを問題とするべきでは?とも思えますが、同条の構成要件は国公法102条1項and人事院規則14-7なので、こっちを問題にすべきです。国公法102条1項・人事院規則14-7を検討すれば、国公法110条1項19号について考えたことになります。

私見②・③で、堀越事件を引用するのがベターかと。引用するのは、
国公法102条1項の「『政治的行為』とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である」。人事院規則も、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものを当該各号の禁止の対象となる政治的行為と規定したもの」であり、こうしたおそれが認められるか否かは、「当該公務員の地位、その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当である」
の部分。

猿払基準を使わずに、堀越事件の判示を使う理由をきちんとのべること。表現の自由の意義をちゃんと理解していますよ、というのを分かりやすく論じること。

大筋こんなところかと。以上です。

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