2014年3月31日

境界損壊罪について

境界損壊罪が成立するには、境界を損壊するだけで足りるか、さらに認識が不能になるという結果の発生を要するかという問題があります。判例は、
「境界損壊罪が成立するためには、境界を認識することができなくなるという結果の発生することを要するのであって、境界標を損壊したが、未だ境界が不明にならない場合には、器物損壊罪が成立することは格別、境界損壊罪は成立しない」
としています(最判昭和43年6月28日刑集22巻6号569頁・百選Ⅱ80事件)。

このように判示された理由について簡単にメモ。


境界損壊罪を規定する刑法262条の2の文言が、「境界標を損壊し、移動し、若しくは除去し、又はその他の方法により、土地の境界を認識することができないようにした」となっていることも理由となりますが、これだけでは味気ないです。もう少し解釈します。

判例は、境界損壊罪の保護法益を、土地に関する権利の範囲に重大な関係をもつ境界の明確性だと考えているようです。境界を表示している物質(財産)としての境界標それ自体は保護の対象とならないというのがミソです。器物損壊罪と境界損壊罪の法定刑の違いから、このように考えるのが素直です(境界損壊罪は5年以下の懲役・50万円以下の罰金、器物損壊罪は3年以下の懲役・30万円以下の罰金)。

境界標も誰かの財物ですから、それを損壊する行為は器物損壊罪に該当します。ただ、判例は、破壊行為からの境界標それ自体の保護は境界損壊罪で図るのではなく、器物損壊罪(261条)で図るべきと考えているといえます。「境界標を損壊したが、未だ境界が不明にならない場合には、器物損壊罪が成立することは各別」という判示はこのことを表しています。

以上です。

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