2014年1月10日

刑法上の「暴行」

刑法典上、「暴行」の文言が登場する条文は14個です(刑法95条、96条の3、98条、100条、106条、107条、176条、177条、195条、207条、208条、223条、236条、238条。77条の「暴動」を含めれば15個。Y2調べ)。

「暴行」の概念は4つに分類されます。分類の視点として持つべきは、暴行の対象程度は何かです。方法は有形力の行使で共通。

  • 対象→限定なし(人または物) or 人 or 人の身体
  • 程度→限定なし or 反抗抑圧(著しく困難)

最広義の「暴行」は、対象を限定しない有形力の行使です。暴行の程度も問題とされません。内乱罪(77条)の「暴動」や騒乱罪(106条)、多衆不解散罪(107条)など

広義の「暴行」は、人に向けられた有形力の行使です。人の身体に向けられたことは必要でないことに注意。程度も問われず。公務執行妨害罪(95条)、強制執行申立て妨害罪(96条の3第2項)、加重逃走罪(98条)、暴行による逃走援助罪(100条2項)、特別公務員暴行陵虐罪(195条)、強要罪(223条1項)など

狭義の「暴行」は、人の身体に向けられた有形力の行使です。程度は問われず。暴行罪(208条)の「暴行」はこれです。最広義~狭義の違いは、対象の違いです。

最狭義の「暴行」は、被害者の反抗を抑圧(著しく困難に)する有形力の行使です。被害者の身体に向けられたものでなくても、最狭義の暴行になるかもしれません。強盗罪(236条)、強制わいせつ罪(176条)、強姦罪(177条)など

以上は、どのような有形力の行使ならばその保護法益を侵害することになるかという観点から考えた結果です。どの「暴行」か迷ったら、その罪の保護法益を侵害する有形力の行使はどのようなものか(最狭義は分かりやすいので、対象が限定なし or 人 or 人の身体のいずれなのか)を考えましょう。

なお、女子高生にマヨネーズをかけると暴行罪(刑法208条)で逮捕されますので注意が必要です(魚拓)。

今日は以上です。

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