2014年1月26日

民法答案の書き方

答案なんて、「自分がわかったことを他人にも通じるように分かりやすく書けばよい」(事例研究 行政法初版はしがき)。

とは言いつつも、形(かた)のようなものもあります。それは民事裁判の争い方です。民事裁判の争い方を背景にして問われている法律解釈学を提示できれば、きっと民法答案になります。民法の問題は事例問題だからです(いわゆる1行問題を除く)。

民事裁判では、原告が請求を立て、請求を退けたい被告が反論し、これに対して原告が再反論し、さらに被告が反論して、というのを繰り返します。繰り返すうちに両者の言い分が尽きたら、提出された主張と証拠から裁判所が原告の請求が認められるか否か判断します。このように、民事裁判の争い方とは、原告が請求を立てる被告が反論する裁判所が判断するという点を構成要素にしています。

請求を立てる・原告の請求


原告が何を求めるのかはっきりしましょう。だいたい金です。登記手続だったり、物の返還・引渡しなどの場合もあります。また、所有権があることといった権利関係を確認することを求める場合もあります。まずは訴訟物は何かということを明らかにしてください。

何を求めるのか=請求が明確になったら、請求するための要件が何かを確認します。売買代金ならば売買契約が成立していることが要件になりますし、不法行為の損害賠償金なら故意過失・権利侵害・損害の発生・因果関係です。抽象的な要件事実を明らかにすると同時に、要件を充足する具体的な事実があることを示してください。

学習が進んで来たら、原告の請求に必要な要件のうちすべての要件事実を原告が主張しなければならないのか、逆に要件事実が存在しないこと・反対事実が存在することを被告が主張するべきなのかという点を意識してください。

原告の請求を立てる際に意識するのは、被告の反論がなければすぐに事例は解決するということです。したがって、原告の請求に必要な要件はすべて充足していることを示します。これが「請求を立てる」というものです。

被告の反論


被告は何か反論しないと原告の請求に従わなければなりません。原告の請求が認められないように、何らかの反論をします。

反論の方法は2通りあります。ひとつは原告の請求に必要な要件のどれかが充足しない(否認)というものと、もうひとつは原告の請求(権利)が発生していない or 消滅したという効果(抗弁)を主張するものです。そのうち自然と使い分けられるようになります。最初は意識しなくてよいです。

大事なことは、法的問題点が明らかになるように反論することです。「問題提起・規範定立・あてはめ」の、問題提起の部分です。

例えば民法94条2項類推適用が問題となる事例だったら、虚偽表示が「相手方と通じてした」ものではないことを反論するべきです。そうすることによって、事例問題の争点が明らかになります。争点は、通謀はあったのか否か、通謀がない場合にも民法94条2項を用いることができるのかの2点となります。

被告の反論は短くても構いません。被告の反論は原告の請求を妨げることができればよいからです。ただし抗弁を主張する場合には長くなることもあります。要件の確認、要件を充足する具体的事実の確認が必要になるからです。

判断(私見)


原告の請求が立ち、法的問題点を明確にする反論がなされれば、あとは裁判所の判断を示すだけです。いわゆる論点を書けばよいでしょう。規範を立てて、それに当てはめれば、原告の請求が認められるのか棄却されるのか結論が出ます。

教科書や講義で力を入れて勉強するのはこの部分です。請求を立てることができ、的確な反論が用意できれば、判断の部分を書くことは容易でしょう。

まとめ


以上が民事裁判の争い方です。これを使えば実際の紛争の中でどのように法的問題点が明らかになるのかが理解できるでしょう。ベーシックな事例問題ではこれがそのまま答案になります。

問題の中には、請求定立の部分のみが問われていたり、反論を箇条書き的に問われることもあります。「Aという事実はどのような意味を持つか」という問いもあります。

まずは民事裁判の争い方を使って事例を理解できるようになりましょう。これを背景に、何を問われているのか、それに応えるには民事裁判の争い方のどの部分を切り取ってどの断面を示せばよいのかという意識を持って問題演習にあたってください。おススメはLaw Practice民法〈1〉〈2〉です。実際に手を動かし、頭で考えれば、法律って案外わかりやすいことに気付きます。

以上です。

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