2014年3月14日

規制目的二分論の目的

規制目的二分論とは、経済的自由権を規制する立法について、消極目的規制の法については、積極目的規制の法よりも合憲性審査を厳密にするべきという考え方です。ここでいう消極目的とは、国民の生命・健康に対する危険の防止を目的とすることをいい、積極目的とは、社会公共の便宜を促進し、社会的・経済的弱者の保護を目的とすることをいいます。

目的二分論の目的について混乱しがちなので、メモしておきます。

わりとありがちな混乱の例。「消極目的については、合憲性を厳密に審査するんだよな。ということは、違憲になりやすいわけだ。国民の生命を守ることを目的とするのは消極目的だから、その法律は厳密に審査される、と。ん?国民の生命を守る法なのに違憲にしちゃうの?むしろなるべく違憲にしない方がよいのでは?」というもの。

これは誤解です。目的二分論の目指すところは積極目的規制の法をなるべく違憲にしないことにあることを押さえましょう。

そもそも論から。憲法22条1項で職業選択の自由が保障され、29条で財産権が保障されていることから、国民には営業の自由が認められます。建前からいえば、何を仕事にしてもよいのです。ですが、完全に自由にしておくと弊害が生じます。医者だというから診てもらったら、完全にヤブだった場合などが典型です。なので、生命・健康に対する危険を防止、除去するために規制が必要になるわけです。

ですが、この規制は、経済的自由に対する制限であることには変わりありません。ですから、今なされている規制方法よりも、もっと同じ目的を達成できるより緩やかな方法が他にあるのなら、そちらを採用するべきです。これを審査するのが、高橋先生のいうベースラインとしての厳格審査であり、芦部先生のいう厳格な合理性の基準なのです。自由はなるべく制限されない方がよいという、基本的な考え方が表れているだけです。

他方、経済的自由を規制する法の中には、福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、とくに社会的・経済的弱者を保護することを目的とするものがあります。芦部先生のあげている例でいえば、中小企業を保護するための大型スーパーの出店制限や、電気やガス等のインフラ事業における特許性などです。

これらの法律を違憲としてしまうと、経済的弱者保護が図られなくなってしまいます。それならば、今ある規制が多少問題のあるものであっても、著しく不合理あることが明白でない限りは、規制を存続させた方がよいという価値判断が妥当です(これが明白の原則)。規制目的二分論の主眼は、この点にあります。

正確に言うと、目的二分論は、経済的自由を規制する方には様々な目的があるから、その目的にあわせて審査密度を変えた方がイイよね、というものです。何で経済的自由権にはこのような考え方があるのでしょうね?表現の自由を規制する法にだってさまざまな目的があるでしょうにね。

以上です。

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