2014年3月7日

【民事再生】担保権消滅許可の手続

手続は、
  • ①再生債務者等による担保権消滅許可申立て
  • ②目的物の価額に異議のある担保権者による価額決定の請求
  • ③裁判所による価額の決定
  • ④価額に相当する金銭の納付
  • ⑤配当の実施
の順番で進みます。

別除権は再生手続によらないで行使できるので(民事再生法53条2項。以下、民事再生法の条文は法令名省略)、例えば、抵当権者は自由に抵当権を実行できます(民執法180条以下)。ですが、別除権行使が再生の妨げになることも事実です。これに対処するために、民事再生手続では、制度として担保権を消滅させることが可能になりました(148条以下)。

別除権行使をストップさせる方法には、他に別除権協定があります。別除権行使を思いとどまってもらう合意です。「分割で担保物件の評価額を払うから、担保を実行しないでね」という約束です。

以下、各手続について解説。

①再生債務者等による担保権消滅許可申立て


担保権の目的となっているものが「再生債務者の事業の継続に欠くことのできないもの」なら、再生債務者等は担保権消滅許可を申し立てることができます(148条1項)。この申立ては、担保目的物の評価額等を記載した書面でします(同条2項)。

裁判所が「確かにその財産は『再生債務者の事業の継続に欠くことのできないもの』だね!」と判断したら、担保権消滅許可の決定がなされます。

②目的物の価額に異議のある担保権者による価額決定の請求


許可決定の裁判書は、再生債務者等の提出した書面と一緒に、消滅する担保権の担保権者に送達されます(148条3項)。担保目的物の価額は裁判所に納付され、それが配当原資になるので、再生債務者の評価額に不満なら、担保権者は価額決定の請求ができます(149条)。

③裁判所による価額の決定


担保権者による価額決定の請求がなされたら、裁判所は、評価人に財産を評価させ、その評価に基づき財産の価額を決定します(150条1項・2項)。決定額は再生債務者等および担保権者に送達されます(同条6項)。これを見て、裁判所の決定額に不満がある再生債務者等・担保権者は、即時抗告で価額を争うことができます(同条5項)。

④価額に相当する金銭の納付


担保目的物の価額が確定したら、再生債務者等は、裁判所に納付します(152条1項)。この納付があった時に、当該財産を目的とするすべての担保権が消滅します(同条2項・148条1項)。

⑤配当の実施


再生債務者等が納付した金銭は、担保権者に配当されます(153条)。

その他メモ


裁判所が担保権の消滅を許可したら、その担保権は消滅する運命をたどります。ですので、担保権の消滅許可自体を争うのであれば、許可決定に対して即時抗告するしかありません(148条4項)。なお、不許可決定に対して再生債務者が即時抗告することはできません(同項の文言を参照)。

担保権の実行手続の中止命令(31条)は、担保権消滅許可までのつなぎとされます。なので、担保権消滅許可がおりないことが明らかなら、中止命令は出ません(山本 入門 (第3版)139頁)。手続開始前の中止命令についてはこちらを参照

以上です。

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