2014年3月5日

一部請求と時効の中断

時効は、裁判上の請求によって中断します(民法147条1号・149条)。

「裁判上の請求」とは訴訟物のことを指すので、時効中断効は訴訟物の範囲に生じます。判決が既判力を有するのは「主文に包含するもの」の範囲に限られ(民訴法114条1項)、「主文に包含するもの」とは訴訟物のことだからです。

一部請求である旨が明示されていない場合には、当該請求の同一性の範囲内において全部につき時効の中断効が生じます(最判昭和45年7月24日民集24巻7号1177頁)。

一部請求であることが明示された場合は、当該一部のみ時効が中断します(最判昭和34年2月20日民集13巻2号209頁)。訴訟物となるのは明示された一部分のみだからです(最判昭和37年8月10日民集16巻8号1720頁)。したがって、残部については時効中断効は生じません。しかしながら、最判平成25年6月6日判時2190号22頁は、
「明示的一部請求の訴えにおいて請求された部分と請求されていない残部とは,請求原因事実を基本的に同じくすること,明示的一部請求の訴えを提起する債権者としては,将来にわたって残部をおよそ請求しないという意思の下に請求を一部にとどめているわけではないのが通常であると解されることに鑑みると,明示的一部請求の訴えに係る訴訟の係属中は,原則として,残部についても権利行使の意思が継続的に表示されているものとみることができる。
 したがって,明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解するのが相当である。」
と判示しました。つまり、明示的一部請求の訴えは、特段の事情のない限り、残部にとっては裁判上の催告になるということです。一部請求の訴え終了後6か月以内に残部について訴えを提起すれば、残部について催告時点=一部請求の訴え提起時点で時効を中断させることができることになります。

裁判上の請求によって時効の中断効が生じるのは、訴え提起時 or 訴え変更の書面を裁判所に提出した時です(民事訴訟法147条)。訴訟係属中は新たな時効期間は進行せず、勝訴判決の確定時から新たに消滅時効が進行します(民法157条2項)。

以上です。

0 件のコメント: