2014年3月26日

【答案の書き方】議員定数不均衡を争うときの基本

基本となるのは、最大判昭和51年4月14日(民集30巻3号223頁・百選Ⅱ153事件)です。以下、S51年判例と呼びます。山元一先生の百選解説、マジ分かりやすいのでオススメです。

ではさっそく。

原告の主張


投票価値の不平等を理由に選挙無効を主張するのは、「選挙人」である有権者です(Xさん)。

Xは、「選挙の効力に関し異議がある」ので、公職選挙法204条に基づき、選挙無効の訴えを提起します(以下、公選法と略記)。被告は、都道府県の選挙管理委員会になるでしょう。

答案は「野球盤」の方が分かりやすいので、原告の論拠は「投票価値は1対1じゃなきゃダメ!だって、主権者である国民は代表を通じて行動するからね(前文・1条・14条1項)!当然だよ!」にします。どこの誰と比較して投票価値の不平等が生じているのかを忘れないこと。

被告の反論


被告の反論でS51年判例を出します。反論項目は3点。

  • 反論①:公選法204条の選挙訴訟では、投票価値の不平等を理由に選挙無効を争うことは認められない。原告の訴えは却下されるべき。

この点は余裕があれば。論拠は、
「同条による訴訟は、具体的権利義務に関するいわゆる法律上の争訟ではなく、選挙の管理執行機関の公選法規に適合しない行為の是正を目的として、法律により特に裁判所の権限に属せしめられた民集訴訟(裁判所法3条、行政事件訴訟法5条、42条参照)の性質を有するものであって、当該選挙が『選挙の規定』に違反し、しかも『選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、』選挙の全部又は一部の無効を判決しなければならない(公選法205条1項)ものとされていることにより、その限度で許容されるにすぎない訴え」だから。つまり、公選法204条で規定されている訴訟は、「単に公選法規違反の個別的瑕疵を帯びるにすぎないことにより直ちに再選挙を行うことが可能な場合について認められる争いにすぎない」ものである、ということ。
です(S51年判例の天野反対意見)。

  • 反論②:投票価値の不平等が違憲となるのは、㋐国会において通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお、一般帝に合理性を有するものとは到底考えられない程度に達しており、かつ、㋑人口の変動状態を考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われなかったとき。ただし、不平等を正当化できる特段の事情がある場合は合憲(S51年判例の示した規範)。本件では、㋐or㋑が否定される、特段の事情があるので、合憲。

ポイントは、国会の裁量を強調すること。

憲法47条に、「選挙に関する事項は、法律でこれを定める」とされている通り、選挙制度の設計は国会に委任されています。憲法43条2項も参照。なので、選挙区割りを決定するには、人口以外の要素(非人工的要素)を加味して決定してよいと考えます。審査は、合理性の基準。不合理なのが明白でなければ合憲。㋐や㋑が明白に存在するか、特段の事情がないとするのが不合理でないか。これらを論拠に合憲論を展開。

参議院議員選挙が問題となっている事例なら、参議院の特殊性も指摘しておきます。政策的配慮が必要な度合が大きいので、国会の裁量がさらに大きくなる、と。

  • 反論③:事情判決の法理で違憲判決回避

②で仮に違憲となるとしても、選挙を無効とすると多大な影響があります。なので、選挙が違憲であることは宣言しますけど、選挙を無効にはしません。

私見


  • 私見①:選挙権、マジ大事。なので公選法204条で選挙無効訴訟OK
選挙権の意義を解きます。憲法前文、1条、15条1項・3項、43条、44条などフル活用。「選挙権はこんなに大事な人権だよ!公選法204条が想定する訴訟にドンピシャではないにしても、ここ以外では争う手段ないんだし。基本的人権の救済という観点から考えれば、争う手段を認めてあげようよ」という論理。

  • 私見②:S51年判例の規範(㋐+㋑ただし特段の事情)はイイと思う。けれど、被告のいうようにゆるゆるに運用してはダメだと思う。選挙権の意義からすれば、人口比例原則が一番大事。非人口的要素はできるだけ加味しないようにするべき。どうしても加味しなければならないような極例外的な場合にだけ加味することにしよう。という論理で、厳格な1対2を要求。違憲の結論に。
被告の反論①を省略した場合は、ここで選挙権の意義を説きます。選挙権の大事さを根拠に、非人工的要素はできるだけ排除した選挙制度を構築するべきという流れに。

ここで是非とも紹介したい法律があります。「衆議院議員選挙区画定審議会設置法」という法律の3条に注目してみてください。選挙区割りを考える際には価値の開きを1対2以内に押さえるようにしようと法律で定められているのです。

  • 私見③:事情判決の法理は使えない。だって、投票価値の不平等は憲法違反の重大な貸出し、それに、公選法219条が行訴法31条の準用を排除しているから。
無効となるのは選挙(議員定数配分規定)の全体か一部か、を検討します(公選法205条1項)。ちなみにS51年判例は「全体として違憲の瑕疵を帯びる」としています。

おわり


だいたいながれはこんな感じ。以上です。

0 件のコメント: