2014年2月21日

【破産管財人の第三者性】「破産管財人は差押債権者と類似の法的地位に立つ」とはどういうことか

破産管財人の法的地位には3つの性質が認められます。①破産者と同視され、またはその一般承継人とみなされる性質、②破産債権者の利益代表としての性質、③破産法その他の法律によって付与された特別の地位という性質です(伊藤248頁~)。

破産管財人が差押債権者と類似の法的地位に立つというのは、②の性質を指します。破産管財人の第三者性を判断する際に、差押債権者が「第三者」に含まれるならば、破産管財人も「第三者」に含まれるという論理で判断されることが多いです(最判昭和48年2月16日、最判昭和58年3月22日など)。このことについてメモ。

なお、破産債権者が「第三者」に含まれる説明としては、民法177条に関して説明したこちらを参照。以下、破産法の条文は条数のみ。


不動産にたいする強制執行は、ある特定の不動産について差押えをし(民執法45条)、当該不動産についての法律関係を固定した上で(同法46条2項)、差押不動産を換価し、配当することで差押債権者の満足を目的とします。固定する法律関係が特定の不動産についてのみであることにあらわれているように、執行の対象となるのは個々の不動産です。このことから個別執行と呼ばれます。

これに対し破産手続は、破産手続開始決定により破産者から財産の管理処分権限を取り上げ(78条1項)、一般債権者の個別的権利行使を禁止し(100条1項)、破産者の有するすべての財産について法律関係を固定した上で、破産財団を換価し(184条~)、配当による破産債権者の満足を目的とします(193条~)。原則として破産者の有するすべての財産について法律関係を固定し、すべての財産を換価(執行)することから、包括執行と呼ばれます。実質的には、すべての財産に対し差押えをしたのと同じです。

個別的権利行使を禁止された破産債権者に代わり、破産管財人が破産者の財産を維持・増殖するために行動します。ですから破産財団に関する訴えについては破産管財人のみに当事者適格が認められ(80条)、たとえば取戻権の行使に対して「当該財産は『破産者に属しない財産』ではない」として反論するのは破産管財人の役割です。

否認権行使の権限が破産管財人に認められるのも、破産管財人が否認権行使を通して破産財団を増殖することが期待されているからです。否認権に関する規定が「破産財団の管理」の章に規定されているのはこのことを表しています(第6章)。民法上、強制執行を見越した債務者の財産増殖のための制度として詐害行為取消権が定めれていますが(民法424条)、破産手続においては個々の債権者が詐害行為取消権を行使することが許されない代わりに(45条1項参照)、破産管財人に否認権が与えられているのです(173条1項)。

このように、破産管財人は破産債権者の利益を代表する存在です。破産管財人=破産債権者です。破産債権者は包括執行における配当を受ける存在なので、個別執行で配当を受ける差押債権者と同じ地位にあり、破産債権者=差押債権者です。そうすると、

  • 破産管財人=破産債権者=差押債権者
という関係にあるといえます。ゆえに「破産管財人は差押債権者と類似の法的地位に立つ」ことになります。

以上です。

0 件のコメント: