2014年2月20日

破産手続開始決定があったとき、会社組織に関する訴えは破産法44条1項で中断する?

最判平成21年4月17日判時2044号74頁(百選16事件)の判示について。株主総会決議不存在確認の訴えが提起され、第1審係属中に会社に破産手続開始決定がされた事案です。

問題となる総会決議の内容は従前の取締役の解任(解任されたのは原告である株主)および新たな取締役の選任で、この決議が不存在なら選任された取締役はその地位を失います。が、会社が破産手続開始決定を受けたことは会社・取締役間の委任の終了事由なので(会社法330条・民法653条2号)、文言から素直に考えれば会社の破産即ち取締役の地位喪失となり、訴えが認容されようと棄却されようと紛争解決にならず訴えの利益がないとも思えます。このように直接の争点は訴えの利益があるか否かでした。

結論的には訴えの利益は当然には消滅しないとされました。この判例の意義は、その前提として、会社が破産手続開始決定を受けたときの会社と取締役の委任関係について判示したことにあります。それは、
「民法653条は,委任者が破産手続開始の決定を受けたことを委任の終了事由として規定するが,これは,破産手続開始により委任者が自らすることができなくなった財産の管理又は処分に関する行為は,受任者もまたこれをすることができないため,委任者の財産に関する行為を内容とする通常の委任は目的を達し得ず終了することによるものと解される。会社が破産手続開始の決定を受けた場合,破産財団についての管理処分権限は破産管財人に帰属するが,役員の選任又は解任のような破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等は,破産管財人の権限に属するものではなく,破産者たる会社が自ら行うことができるというべきである。そうすると,同条の趣旨に照らし,会社につき破産手続開始の決定がされても直ちには会社と取締役又は監査役との委任関係は終了するものではないから,破産手続開始当時の取締役らは,破産手続開始によりその地位を当然には失わず,会社組織に係る行為等については取締役らとしての権限を行使し得ると解するのが相当である」
という判示部分です。

この判示部分を前提とすると、取締役の選解任を議題とする株主総会決議取消しの訴えのような「破産財団に関する管理処分権限と無関係な会社組織に係る行為等」に関する訴えは、中断しません

破産手続開始決定により、「破産財団に関する訴訟手続」は中断します(破産法44条1項)。この「破産財団に関する訴訟手続」には①破産財団に属する財産に関する訴訟、②財団債権に関する訴訟、③破産債権に関する訴訟の3つが含まれますが、破産者の財産には直接関連しない「会社組織に係る行為等」は含まれないからです。破産法44条がそもそも適用されないため、破産管財人による受継も問題となりません。この訴訟については、依然として破産手続開始決定を受けた会社が被告となり(会社法834条)、取締役が訴訟追行します(会社法349条4項)。H24倒産法 第1問 設問2ではこれが問われました。

以上です。

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