2014年2月14日

【民事裁判】請求を特定する請求原因、理由づける請求原因

民事訴訟法133条2項2号の請求原因は「請求を特定するのに必要な事実」です(民訴規則53条1項かっこ書)。民訴規則53条1項の「請求を理由づける事実」も請求原因です。

特定請求原因事実と理由づけ請求原因事実について、「Yは、Xに対して、300万円を支払え」という請求の趣旨を材料にして考えます。

請求を特定するのに必要な事実


請求の趣旨は認容判決の主文に対応するもので、訴訟物の結論に相当するものです。訴訟物とは、訴えの内容としての原告の被告に対する一定の権利主張ですが、給付訴訟の場合、請求の趣旨からはその法的性質が不明確です。どのような法律関係に基づいてXがYに300万円を請求しているのか分かりません。金銭の請求に限ってみても、その根拠には契約、不法行為、不当利得など様々な原因が考えられます。

そこで、請求を根拠づける法律関係を特定する必要があるわけですが、それに用いられるのが特定請求原因事実です(民訴法133条2項2号・規則53条1項かっこ書)。つまり、「特定」する対象は、請求の趣旨(訴訟物)の法的性質です。

請求を理由づける事実


Xの請求が売買契約に基づくもので、その売買契約がYが自分で出向いて締結されたものである場合、この売買契約締結の事実は請求を特定する事実であると同時に請求を理由づける事実になります。訴状の記載は「Xは、Yに対し、平成○年〇月○日、(売買目的物)を代金300万円で売った」となるでしょう。売買契約に基づく代金支払請求の要件事実は売買契約を締結したことのみだからです(民法555条)。

売買契約の当事者はXYですが、その締結がXとY以外の人の間でなされることもあり得ます。Yは契約締結の場におらず、いたのはXとZであったという場合もあります。ZがYの代理人であるとか使者であるとか。Zが代理人である場合、XとZの間で締結した売買契約がXY間に帰属するためには民法99条の要件(代理権の存在・顕名・代理行為)を充たす必要があり、各要件に該当する事実を摘示する必要があります。

売買契約は代理によるものであっても、使者を用いてなされたものであってもその法的性質は同じです(XとYとの間で直接締結された売買契約と、Xと代理人Zの間で締結された売買契約と、Xと使者Zの間で締結された売買契約とは、法的性質は全部同じ。全部民法555条の売買契約。XとYを当事者とする売買契約であることに変わりはない)。しかし、当事者間で直接締結された売買契約と代理による売買契約では、必要な要件は異なります。代理によって締結された売買契約に基づく代金支払請求が認容されるためには、代理の要件と売買契約の要件をすべて充足する=理由づける必要があります。

つまり、「理由づける」とは請求が認められることを「理由づける」という意味です。

理由づけ請求原因事実は、訴状審査の対象になりません(民訴法137条1項前段・133条2項2号参照)。

メモ


いわゆる要件事実とは理由づけ請求原因事実のことです。

請求を特定する事実と請求を理由づける事実の違いについて。貸金返還請求の要件事実は金銭返還約束、金銭の交付、弁済期の合意、弁済期の到来ですが(貸借型理論による)、金銭返還約束と金銭の交付があれば消費貸借契約は成立するので(民法587条)、この2つで特定できます。消費貸借契約に基づく貸金返還請求であるということは分かります。つまり、

  • 特定請求原因事実=消費貸借契約締結の事実(金銭返還約束+金銭の交付)

  • 理由づけ請求原因事実=金銭返還約束+金銭の交付+弁済期の合意+弁済期の到来
という具合です。


以上です。

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