2014年2月19日

破産法162条1項2号の「破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為」(非義務行為)について

既存の債務に対する担保供与 or 債務消滅行為を否認する場合です(破産法162条)。

「既存の」債務に対する担保供与・債務消滅行為が対象ですから、支払不能後に新たに融資を受ける際にその担保のために担保権を設定する行為は対象外です(いわゆる同時交換的取引の例外)。162条が予定しているのは、債務自体は危機時期前に発生しているが、支払不能等の危機時期後に担保を設定する行為などです。

同条1項2号の非義務行為は、「行為自体が破産者の義務に属さない場合と、時期が義務に属さない場合」の2つです(伊藤406頁)。

抵当権や譲渡担保の設定などの担保供与は、特約がなければ「行為自体が破産者の義務に属さない場合」にあたります。単に債務が存在するだけでは担保供与義務は認められませんので、非義務行為です。

「時期が破産者の義務に属しない行為」は、たとえば弁済期到来前の弁済、特約がないにもかかわらず行われる更改など。

なお、単なる代物弁済は本規定の否認の対象にはなりません(伊藤406頁の注179参照)。破産法162条1項2号は、担保供与等の行為の方法が義務に属しない場合を含まないからです。同号本文に、「その方法が破産者の義務に属しない行為」という文言はないですし。ロースクール倒産法(2版)ユニット9、Q1の7)はこれが問われています。もちろん、160条2項による詐害行為否認や破産法162条1項1号による偏波行為否認の対象にはなります(最判昭和41年4月14日民集20巻4号611頁〔百選31事件〕は代物弁済を162条1項1号で偏波行為否認することができるかどうかという事案です)。

以上です。

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