2014年2月20日

【民法467条】債務者「その他の」第三者と、債務者「以外の」第三者

債権譲渡は、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾がなければ、「債務者その他の第三者」に対抗できません(民法467条1項。以下、民法は条数のみ)。

「債務者以外の第三者」に対して債権譲渡を対抗するには、譲渡人による債務者への通知 or 債務者の承諾を確定日付のある証書によってする必要があります(467条2項・民法施行法5条)。

債務者「その他の」第三者


1項の「債務者その他の第三者」とは、債務者や債務者の包括承継人などのことをいいます。譲渡の当事者である債権者、その譲受人以外の者という意味で、債務者も第三者であることを前提にしています(三人称としての債務者)。1項は債務者に対する対抗要件を定めたものです。

なぜこのような規定ぶりになっているかは物権法との比較によって明らかになります。

物権の譲渡は、当事者間においては意思表示のみで有効です(176条)。売買契約に基づいて動産の引渡しを請求するのに対抗要件は必要ありません。これは、譲渡の目的物が物だからです。引渡されようと留置されようと、物はなされるがままです。引渡されようが留置されようが、物にとっては利害関係はありません。物に対する「対抗」を考える必要がないのです。

ですが、譲渡の対象が債権である場合は別の配慮が必要です。なぜなら、譲渡の対象となった債権には債務者がいるからです。債権譲渡は譲渡人たる債権者と譲受人たる第三者のみで有効になすことができ(466条1項本文)、債務者の関与は不要です。債務者にとっては、ある日突然現れた者が、旧債権者から有効に譲受けた新債権者なのか、それとも債権者を騙った者なのかは明らかではありません(なお、478条参照)。

仮に債権者を騙った者に誤って弁済した場合、債権者の債権は消滅しないので、債務者は二重弁済しなければなりません。ゆえに、二重弁済の危険から債務者を保護するためには、弁済を請求してきた者が自身が債権者であると債務者に「対抗」できない場合には弁済しないでよい=債権を譲受けた者が弁済請求するためには、債権譲渡を債務者に「対抗」できる必要があるというルールにしておくべきです。

このように、譲渡の目的を債権とする場合では債務者に対する「対抗」を考える必要があるため、467条1項で「債務者その他の第三者」=債務者や債務者に準ずる者に対する対抗要件を定めているのです。


債務者「以外の」第三者


467条2項の「債務者以外の第三者」とは、債権の二重譲渡がされた場合の譲受人から見た他の譲受人のことです。「債権の譲渡を受けたのは俺だ!」と主張して争う者のことです。

判例によると、「債務者以外の第三者」とは、債権譲渡の当事者以外の人で、譲渡債権に対し法律上の利益を有する人です(大判大正4年3月27日民録21・444)。債権そのものについて、譲受人の地位と両立しえない法律的地位を取得した第三者です(我妻栄『新訂債権総論』[1964]543頁)。

以上です。

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